ありがとうを言えなかったから
ありがとうを言いたい人は沢山いる。
が、最近思い出したおじちゃんの話をしようとおもう。
もう亡くなったそのおじちゃんは父の友人だった。
お酒を飲めば踊り出す癖があって、
大酒飲みで、それはタチの良いものではなかったので
子供の頃は苦手なおじちゃんだった。
でも、なんでもできるおじちゃんで
魚や鶏をさばいたり、布団も打てるし、門松もいつも立派なのを拵えてくれて、どれもとっても上手だった。私はおじちゃんの作る鯉の洗いや鶏の刺身が好きだった。
大人になって祖父の葬式で久々に顔を合わせた時
ギスギスした親戚の間を和やかにしてくれたのもそのおじちゃんで、子供の頃にはわからなかった人の良さを知ることができた。
そんなおじちゃんが最近夢に出てきた。
妊娠してからの夢はとても明確だ。
綺麗なカラーだし、やりとりも不思議がなくて
現実の暖かい場所の様に感じる。
そこではその辺に沢山の地鶏がいて
ちょっと何匹か捕まえてきて欲しいと頼まれた。
ビックリするほど大人しい1羽捕まえて
戻ってきたら、
そのおじちゃんが私の採ってきた地鶏を絞めて刺身にして出してくれた。
羽身を美味しくいただいていたんだけど、妊婦は生もの食べちゃいけないんだったって気が付いてそう告げたら、子供が出来たことをとても喜んでくれて、
私がみるおじちゃんの顔の中で1番優しい顔をしていた。その後おじちゃんはねぎまを串打ちして焼き鳥にしてくれると言った。
まだ生きてるおばちゃんをおじちゃんが呼んで
私の妊娠を告げると、おばちゃんも大層喜んでくれた。そして、食べたい物がないかと聴いてくれた。
私は、おばちゃんの炊く味噌味でトロットロの豚足が大好物で、それが大人になってからずーーっと食べたかったんだと伝えると、25分待ってくれる?と台所へ行ってしまった。
本当に楽しみでワクワクしていたら
夢が終わってしまった。
本当にさみしかった。
まだ地鶏を食べたお礼も言えてなかったのに。
おばちゃんの豚足も食べられなかった。
その日の夕方父とテレビ電話をした。
おじちゃんが夢に出てきたことを伝えると
その日の父の晩酌は
おじちゃんが大好きだったさつま揚げだった。
夢の経緯を話すと
現実みたいな夢だと父は目を細めて焼酎を飲んで
ちょっと目を拭っていた。
父と仲良くしてくれて
私たち家族を大切にしてくれて
本当にありがとう。おじちゃん。
生きている間に言えなかったから
ここに書いた。
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