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執行役

すれ違う人が歩きタバコをしていて、病気になって死ねと思った。

体にまとわりついた煙と、まとわりついた嫌なもの。

早く払い落としたくて、全力で走って帰る。


片手にぶら下げているのは、塩化ビニールの袋に入った魂。誰かしらの魂。いや、ただの魚の魂。

その横をクラクションを鳴らしながら走っていく車あり。

猛スピードで走るその車に、轢かれたのは轢かれて当然の人だ。

そう、僕だと見間違う人。


今夜も食べたくもないご飯を奮発した。

まぁ、そのまま捨ててもいいさ別に。


明日から休日だというのに金もなく、安価な添加物料理で脳みそを満足させて終わる。

添加物にまみれた暮らし。

顔のシワは増え、脳のシワは伸びていく。

横断歩道を渡る途中で、右折車に轢かれて終わった人生。

おい、さっきの車かよ。俺は轢かれて当然の人間だったのか。

滅んでしまった絶滅危惧種。

淘汰された自分。

まぁ、どうやら手違いでレッドリストに載っていなかったようなので、私は最初から保護対象ではなかったようです。残念としか言いようはありません。


情報にまみれた暮らしで、脚は細くなるが頭はでかくなる一方。

暗闇の中で何を踏んでしまったのかもわからずに、そのまま歩いている。

ぺたぺた、ぺたぺた。

つまり裸足か。という事はこの暗闇は自室かもしれない。

足の裏は出血しているようだ。

糞尿の臭いも立ち上がってくる。
なぜかはわからない。

そのまま、行列に並んだまま、そのままで移動する。

リタイヤしたくなった人はどうぞご自由に、どうぞ。はい、ご自由にどうぞ。

横入りする人には圧力をかけましょう。

それが、この島国に生まれ育ってきた日本人のマナーというものです。

あなた達の国ではこのような光景はあまり見ないでしょう。

「なあ、いいから早くしろよ」


我先に向かいたい場所は、汚物にまみれた僕という人間の臭い。

ここは今日という日を悔やむ為の部屋であり、断末魔が響き渡る部屋。

今朝生まれた僕を、夜に殺める為の処刑場。

業務執行取締役を担ってくれたのは、20年前に笑っていた自分だった。

可愛い顔をして笑っている。

若い。

さて、私はここまでのようです。
後はよろしく頼みました。


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