踏ん張って立つ老人


電車で立ってる老人。
席はポツポツ空いてはいるが彼は席に座らない。
おそらくつり革や手すりにも触りたくないから、ひたすら踏ん張って立っている。
電車が揺れるたびによろける。
転びでもしたら大変だ。心配だから普通なら彼に席を譲るんだがこの人は席には座りたくないわけだからそれもできない。
僕が席を譲らずともそもそも席はたくさん空いてるし。
たぶん車両に誰もいないとかじゃないと安心して座れないわけでしょ。
だからひたすらにフラフラよろけながらも踏ん張って立ってらっしゃる。

別に、彼のことをどうこう思いはしない。
気をつけまくってる人なんだろうと思うだけだ。僕なんかとは比較にならないほど気をつけまくってるんだろうと思うだけだ。


いつの間にか気をつけまくってる人と気をつけなさすぎる人との差がとんでもなく開いてしまった。
9年前の原発事故の時もそうだったけど、もともとはみんなが気持ちを同じくするような災害だったはずなのに、その気持ちにもズレが出てきて時間がたつと大きな対立になってくる。

まあ、今はそれはいい。

目の前にいるのは電車の中でよろけながらも踏ん張って立つ老人だ。
また新しいやっかいな案件が生まれてしまったなあと思う。


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