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我がシェアハウスについて

 先日、バーで隣席の酔客がうちのシェアハウスについて意見を述べていた。なぜうちのシェアハウスについて語りだしたのかはよくわからない。たぶんいろんな不満や鬱憤がたまっていて、ひとつを吐き出したところ、栓が抜けてだだ漏れになってしまったのだと思う。
 その酔客は、以前、泊まりに来たことがあったそう。たしか1泊したと言っていた気がする。そしてがっかりしたようだ。
「越前市の方にあるシェアハウスに行ったことがある」
「家入さんの真似したみたいな」
「リバ邸みたいな」
 うちは越前市ではなのだが、なんかもうこの時点で「うちのこと言ってるな」と気づいていた。そして、いいことは言わなさそうとも感じていた。

 案の定、まあ否定的なことを言いたい放題。酔客の相手をしていたオーナーは、いつからうちのことを話していると気づいていたのかわからないけれど、途中で「ここにいるよ」と苦笑しながら私を指した。それはあんまり言いすぎるなと釘を刺したのか、おもしろい展開になったと思ったのか。
 酔客は私が住人だと気づくと少々ばつの悪い顔をしたが、言葉が止むことはなかった。
「どうせ家主がいなくなれば崩壊する」
 そんなことも言っていた。
 私はといえば、家主を悪く言う人と出会うことも多いし、私自身が「あなたが苦手」と本人に言ったくらい好きになれなかった時期もあるので、大して気にもならなかった。ただ、家主を悪く言う人はいても、シェアハウスを悪く言う人に出会ったのは初めてで、ちょっと楽しんでいたのは確か。だって、どんなふうに思われてるのか、聞いてみたいじゃない。

 1泊か2泊かわからないけれど、泊まるのと暮らすのとが別なのだとわかった。1泊とかしてその後再び来ることがない人たちは、もしかするとみな、こんなふうに思っているのかもなぁ。
 その酔客に限っていえば、期待していたんだと思う。うちに来れば、家主に会えば、なにか大きな変化が訪れるかもしれない。なにかが手に入るかもしれない。目に見えるものなのか、見えないものなのかわからないけれど、「なにか」を得られると思っていたんじゃないだろうか。
 だが、なにもなかった。特別なことなどない、ただの家、ただの人、ただの日常。たぶん拍子抜けしたんだと思う。
 だってね、ここはシェアハウスだもの。ただみんなが一緒に暮らしてるだけの家だもの。
 家の中にいる家主は、ただのモリ。Twitterやなんやかやでカリスマ性を発揮しているのとは別物。そんなもん、四六時中、カリスマでいるわけがない。ただのモリで、ただの家族(擬)の一員。家主ではあるけれど、ほかの住人と大して違わない。
 特に、SNSでなんとかと寛容について論を展開していて、一部に熱狂的な信者を抱えているなんてことを知らずに出会った私にとって、家主は少食なやせっぽちで、ごはんを食べさせなきゃと思う住人(家主だけど)にすぎない。

 ここはシェアハウスで、みんなが一緒に暮らしている。ま、私は一軒にひとりで住んでるけど(笑)
 一緒にごはん食べたり、それぞれが好きに食べてたり、一緒に本を読んだり、自室にこもっていたり、みんなで出かけたり、出かけなかったり。普通の家族のように暮らしている。友だちのようで友だちではない、血のつながらない家族のようなもの。
 毎日のように飲み会をしたりもするけれど、なにもない夜もある。だって、家だもの。
 家での生活に期待してもなんもないに決まってる。
 ただ、世間よりは安全で優しい世界。あからさまな敵意は皆無、嫉妬はなきにしもあらずだけど、悪意は少ない。そういう世界を好む人と一緒に暮らしたい人が集まる家。(こんな家になったのはモリだからこそかもしれないけど)
 そういう場所だとわかって住み続ける人もいれば、違うと去っていく人もいる。それだけのこと。

 家主は7月か8月にはここを出る。また戻ってくるとは限らない。
 住人たちは家主の求心力で集まったように見えるが、残っているメンツを見るとそうでもない気がする。きっかけは家主の強烈なメッセージという人もいるが、誰ひとり、モリを崇めてはない。だって、ただのおじさんだもの。
 行儀が悪くて、ちょっときれい好きで、全然怒らなくて、たまに機嫌が悪くて、大声で笑って、ときどき意地悪で、わかりにくいけれどものすごく優しい。そんなただの人。
 家主がどうであれ、いずれシェアハウスは解体するかもしれない。そのタイミングと家主が出ていくのが一致するかもしれない。ただそれだけのこと。
 先のことなんて考えてない。今、ここにいる、だけ。今、ここにいて楽しい。ここでの暮らしが好き。それ以上に好きな場所や、居心地いい場所が見つかれば移動する。それだけ。

 これが私の思う、このシェアハウスと家主の実態。あくまで一個人の意見で、ほかの人たちがどう思っているのかはわからない。もしかしたら家主を崇め奉ってるかもしれないし、家主がいないならここにいる意味はないと出ていくかもしれない。
 ちなみに、私は見送るのが嫌いなので、本当は家主より先にここを出ていくつもりだった。だけど引っ越し費用を貯めるため、出ていくにしても家主より後になりそう。ちくしょう、またしても後塵を拝するのか!(いつだってモリは私の先を行っていて、それが大層悔しいのだ)
 そして、誰がなんと言おうと私はモリが好きで、どんなことを言われても気にもならない。私は私の目に映るモリだけを見ている。フィンランドに行っても、ちゃんとごはん食べるんだよー。

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私が書いたシェアハウスについての記事はこちらにまとめてあります。





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