「チョンキンマンションのボスは知っているアングラ経済の人類学」読書感想文

どんな本か?


金儲けをする為に香港で商売をするタンザニア人について文化人類学者こと小川さんが同行し、多様な人類が形成する新たな信用システム•シェア経済がどうなっているのか、チョンキンマンションのボスことカルマから紐解いていくお話。

気になったポイント、分配と贈与。

カルマたちがやっていることは贈与ではなく「ついで」という分配であること。贈与関係は、相手に対して負い目を感じさせる所がある。贈与された時に、自分も何か貰ったら返さないとな、どんな役割を期待されているのかと考えてしまう。分配とは、無理をしない範囲で余り物を分け与える事で、例えば「ふるさと納税等で余らせた食材」など、相手に負担を与えず、自分も無理をしない物。「ついで」で貰うと確かに、不要な服を貰った時に贈与と比べ心理的な負い目はない。ゼロコストで余らせた奴の話に繋がるのかなと思った。それゆえに、無理をしない範囲での「ついで」の分配で関係が構成されている。

「ついで」であるが、不満を感じてしまう

文中にある小川さんのエピソードで、「ついで」を組織する知恵を理解しても、不満に思う事がある為、発想を変えて、相手の求めに対してwin-winな利益に変換すること、例えば「スマホの保護シールを10枚セットの卸値が買うから、他は誰かに売って、その取り分は半分でいいから」と提案すれば不満を感じず上手く行くかもしれない。と書いてあり、身近な例として、コンビニに行く時に「何か買ってきて」と言われて買うのは「ついで」で、「(その事に不服なら)じゃあコーヒー、一杯だけ奢って」と相手の要求に上がりこちら側も要求することの様で良かった。

これは商人の話である。

独立独歩の精神とついでの余り物を分け与え、複数のステークホルダーと不可侵のプライベートに踏み込まず、利益になる時に協働し、SNSを駆使して関係性を維持する為に、派手な投稿や人間性を反映させる投稿、多様な人類に関係を持つ為に通じやすいおもしろ動画を送りつけることなど。全ての行為が商売に収斂されて、商売人の思考であると感じさせられる本でもあった。

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