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「新興ウェブトゥーン制作事業者を苦しめる王者「ピッコマ」の“取引条件”」を読んで。

まずは以下の二つの記事を読んでいただけると。


目先の締め切りをおっぽいといてまでこの辺りについて
書こうと思ったのは、
「語って欲しいけどあまり語られない料率に関する記事」だったから。

ガラケー時代から電子配信に触って15年あまり、ずーっと料率に悩まされ続け、今なお悩まされている人間として、一言書いておきたいと。

15年の恨みつらみも入っているのでチョイ長くなりました。
締切を延ばしている仕事先の皆様申し訳ございません!
でもこれはやっぱり書いておきたい。

ちょっと批判的に見えるところもあると思うんですが、
基本的には

・批判の為の批判ではないです!

・料率の話は巡り巡って作家さんの利益、
 マンガ業界全体の利益になる!

・一将功成りて万骨枯る、にならないで欲しい!

・中小デジタル配信会社はサイトにもよりますが
 大手の半分以下の料率しかもらえていない、
 あまりに不平等。地位の濫用じゃねえのそれ!

という感じから書いています。
だーっと書いているので、話が飛んだりしているところ、
足りないところ、総じて雑な所はご容赦を。

上の記事を読んでいただけたでしょうか。

まずはダイヤモンドの記事から。

独占配信の場合は28%、非独占配信の場合は25%という料率を提示している。ピッコマの料率について、ある関係者は「業界水準と比較して、ありえない低さだ」と憤る。

「これをありえない」と言っている事自体、
大手の方ですか?と聞きたくなりますね。

マンガの大手配信サイトでは、これくらいの料率でやっている制作会社は
ざらにあります。
TL、BLのデジタルネイティブの会社ではこれ以下のところも。
ざっくり大手の料率の半分かそれ以下のところは珍しくありません。

もちろん、この状況がいいわけないです。

半分ですよ? 同じ仕事してる隣の席の奴が
社長の親族だから倍の給料で、
お前は庶民だから半分な!て肩叩かれて言われたら、
誰でもさすがにウーンてなりません?
(誇張が大きくてすみません)

大手は50%以上もらってて(ここはちょっとお茶を濁す)
中小20%代とかもありますから3割減どころの話ではない。

一般的に、ウェブトゥーン作品を制作するには、20話程度でも1000万円以上のコスト がかかるとされている。同関係者は「制作側は28%、25%の中から、作家などの権利者 へ還元する必要がある。この料率では制作にかかる初期費用までを回収できず、トータル では赤字になってしまう。制作側にとっては極めて厳しい条件だ」と説明する。

これに関して言えば、気持ちはわかる。
わかるけど、申し訳ないけど、
制作側甘いよ~という面も否めないのではと。
出口戦略がないまま、大金投資をしたらいかんですよ。

それと、WEBTOON=スタジオ制作なので金がかかるというのも、
この記事にも単純にそうとは言えないでしょ、
というのもあります。(記者として勉強不足じゃね?)

「俺だけレベルアップの件」を制作しているレッドセブンスタジオのイさんもインタビューでウェブトゥーンはスタジオ制作であるという誤解に対して言っています。


今でも収益を得ている作家の6割くらいは、韓国でも個人で作業していると思いますよ。

と。今更の感もありますが第一人者の言葉なんで、まだの方は是非一読を。

WEBTOONに関してはローカライズのお手伝いしているくらいの私があれこれ言って僭越ではありますが、それでも大手から中小のTLまで、それなりのデジタルのヒット作の数字を見ている経験から言えば、いくら「俺だけレベルアップの件」が大ヒットしたとはいえ、

「WEBTOON金掛け過ぎじゃん?これで本当に回収できんの?」

というのも率直に思うところです。

ちょっと脱線してますが、
コンテンツって、市場の規模から逆算して利益立てるとかできんのかな?
一応式はあるのかも知れませんし、上場企業とか投資を受けてる会社だと一応の計算をやらないといかんのんでしょうが、現場には勝利の方程式はない、というのが常識ですからね。もちろん、なんちゃって方程式とか俺様方程式はあるけど…。

確かにピッコマというアプリを「少年ジャンプ」というインフラと同様に使えるとポジティブに考えれば(いくら頑張っても外部の人間はジャンプに作品を載せられない)、世界的大ヒットの可能もあって、やる気が出るのは事実ですが、本当にマンガの10倍(追記:4~5倍ですね)かけて回収できるのか、こればかりは何とも言えません。(水差しまくりで恐縮です)

後ろから、いきなり殴られたような意外なヒット(あくまで私の目から見てですが)って割とありますし、そういうのって大概、これまで思いもしなかったやり方とか、一見無茶なやり方から発生してるしね。

しかも、2021年時点ではピッコマは事業者らに競合サービスと同等の独占配信の料率を提示していたという。仮に料率が40%から28%に下がったのであれば、得られる金額は実に3割減となる計算だ。

これですよね、気になるのは。不平等条約。後出しジャンケン。口が悪くてすいません。でもこれは本当何とかして欲しい。
Amazonとかアップルみたいに建前だけでもちゃんと数字を提示して欲しいとずっと思っています。難しいのもわかっているけど言い続けないとね。

これって結局作家さんへの戻し、次の作品への投資という継続性、ぶっちゃけ言えば、生存権というか、俺だってもう少しうまいもん食いたいんだ!(そうすれば面白いマンガだって作れるはずだ!…)というところです。

一応は公平さを担保したその上で、売り上げがいい時はサイト側へキックバック出すとか、特定のキャンペーンに対して、限定的な料率のダウンをするとか、そういうこともっとできないんでしょうか。できますよね。

独占的なサイト、アプリの一人勝ちにならないように、
新しいスキームのサービスが出て来ることを期待してやみません。

ピッコマと独占契約を交わした場合の独占配信期間は2年間。

これはさすがに長い。なげーよ。

料率も3%しか上がんないし。

これだけ縦スクロールに対応した配信先が多くなって、
これからも増えて行こうという時代に、
3%で2年も囲い込みとかあり得ないなと個人的には思います。
先行して囲い込み逃げ切り、次への投資…みたいな感じでしょうか。
みんなが優先配信にしたら、横並びになって
結局得するのはサイト(アプリ)だけなんじゃないでしょうか。
(というのは短絡過ぎでしょうか。)

制作側はお金をかけていれば当然、出来るだけ早く回収したいしね。
この独占契約、私ならしないな。

どこの配信先で火がつくかっていうのも、
未知数な部分もあるんですよ、経験として。
サイトの特徴や施策も違うし。

分析すればそれなりの言葉が出て来るんでしょうが、
再現性はあんまりないよーな気がします。
ので、私なら3%の上乗せくらいじゃ
2年の長期独占配信契約はやらないかなーと。

この件は後でも書こうと思いますが、
問題は、独占を受け入れなかったことによる
大きな不利益な扱いがないか、ということの方ですかね。

まあ、誰でもどこでも利益率の高い物を優先して
扱いたいですしね。
配信側の商売としては当然です。

ですが、実際に私は

「料率を下げないと不利益な扱いを受ける可能性がありますよ」

とはっきり某サイトの方から言われたことがあるんで。
ある意味脅迫ですよね、それって。料率下げろと言う。
その時はさすがにムッとしたので

「売れる作品を作るだけです。それでも不利益な扱いができるなら
やってみろ!」

と…。
(こんなステキな言い方はもちろんしませんでしたが、
私がケンカをしたと噂になってると
後で他の方から聞いたので、
向こうはケンカを売られたと思ったのかも知れません。
相手の目を情熱を込めて見つめて話したような気は…。
真剣だったんですよ…)

ちなみに、通常のマンガ配信だと独占というのは、
私はやったことなくて、
2週間とか1か月とかの先行配信が多いんではないかと。
(どこで先行するかって言うのも、
色々な条件があるので一概には言いにくいです。
料率の低いところは後回しにしたいとか…)

ピッコマの人気ランキングは100位までしか表示されない。

これはね、文句言っても。サイトの作りだから。
頑張って100位に入るような面白い作品を作るしかない。
めちゃコヒも100位までしかでなひよ。

ユーザーの目に触れないことは、制作側にとっては死活問題だ」(関係者)

コンテンツ作ってりゃそんなの当たり前じゃん!って心中では突っ込みます。そこみんな苦労してるよ関係者。

サイト側も売上アップのための何らかの理由があって、
そうしているかと(そう思いたい)。

ここは意地でも面白い作品を作ることで
乗り越えるしかないんですよ、今のところは。
その上でどう配信するかですね。
センスだけではどうにもならない問題もあります。

この関係者の方は(あるいはライターの方は)、
料率とかコンテンツの中身とか、サイトの方針とか、
そういう別途に考えるべき問題を
ちょっとガッチャンコしすぎじゃない? 

荒い言い回しを多用してしまって恐縮ですが、
結局何が言いたいかというと、

日本の配信サイトの不平等は本当に納得感なくて
appの30%の税金やAmazonの料率と(一応の)公平さが
可愛く見える

というのが長年デジタル配信に関わってきた私の
超個人的な感想です。

長くてすいません。

続いては菊池健さんのnoteを読んで思った事です。
(小学生の感想文みたいですいません)


ネットでデジタルコンテンツを販売する時、長い目で見ると料率以上に売上や収益性、継続性を見るビジネス勘が重要です。端的にいえば、料率が半分になっても3倍の数売れたら収益性はそちらのほうが高いということです。

いやいや、これさすがに話が単純すぎるでしょと感じましたです。
3倍売れる作品なんて、めったにないですよ。
(成功事例はもちろんあるでしょうが)

現実問題としては、表に出ない、失敗あるいは失敗に近い例の方が
多いと思うんですが、その時に圧倒的にボディブローのように
効いてくるのは、料率だと思います。

だって、倍違うんですよ。繰り返しますが。

事業の継続を考えると、最悪1勝1敗1引き分けでいきたいと
思った時に、1敗の大きさが違うわけですよ。
料率が違えば。勝ちももちろんですが。

それに1冊1000円で渋く売っている作品だって
あるわけです。これ料率がある程度あるから
作家さんへのお戻しができている。

こういうタイプの作品を、バナーバンバン打って、
施策てんこ盛りで売上を上げて利益を最高する
利益を最高化しようという
作品と比較して、
売上ベースで考えても意味ないですから。
何百万DLとかいかないのはわかってるし。

もちろん、菊池さんもその辺分かっていると
思いますが、最近WEBTOON、ブロックバスター!
みたいな言葉が溢れる一方で、
その辺のことは落ちがちな気がするので。
その落ちがちなところが日本のマンガの濃さを
支えてきたし、これからも支えていくと思うんですよ。
(で、そこは絶対にWEBTOONとも切れないと思う、
韓国を見れば。)
↑久々に読み返したら自分でも何を言おうとしてたか
分からなかった…。多分、WEBTOONでも同じだぜ!
ってことを書こうかと思ったのかな…。(追記)

何で私が締め切りをぶっ飛ばしてまで、
ストーカーのごとく「料率より売上」という言葉にこだわって
あれこれ言っているかというと、
それって配信サイトが料率を下げろと言ってくる時に
いつも使う、脅しの常套句だからです。
多分、他の業界でも同じなんじゃないでしょうか。

もちろん、ガソリンの値上げとか、
合理的な理由があればこっちも納得するんですが。

料率と売上、両方等しく大事なんですよ、絶対に。
そのバランス。
ここはマンガ家さんにも言っておきたいです。

中小は下げるところ何て全くない、超スリムな体型で
戦っている訳ですから。

それにいい作品作っても、(元々の)料率が低いために、
作家さんにお戻しできないのは、
結果として料率の高いところに作家さんを
持ってかれる…。
仕方ないのはわかっていても悲しいんですよ、
これ本当に。

数字を見てるとやるせないですよ、本当。
酒量も増えるというもんです。

それが商売でしょ?と言われれば、
返す言葉もありませんが…。

大手出版社は私の知る限りでは
やっていないようですが、
配信取次やってくれないですかね。
彼らから回して入れたほうが、
みんなが儲かる。

とにかくですね、私が言いたいのは、
料率も売上と同じくらい大事だっていう事なんですよ。

菊池さんの記事を全面否定するわけではもちろんなくて、
その通りなところの方が多いのは
言うまでもないんですが、
こと料率に関しては、長年煮え湯を飲んでいる身としては
「料率より売上の方が大事」、
あるいはセンスの問題と言って言い切ってしまうのは、
やはり一面しか語っていなくて誤解も招くと思う。

不平等(と感じる)扱いに苦労している会社にとっては、
料率は、販売施策とかそういう問題とは別で
大きな問題だという事は改めて言っておきたいです。

ナンバーナインさんはじめ、
WEBTOON制作会社さんが
作家さん向けに料率を公開していて、
あれももちろん大きな意義があるのですが、
あくまで入金からの数字なんで。

料率関係は守秘義務契約もあるし、
交渉事としても結構面倒な場面もあるので
皆あまり口を開きたくないことでは
あるとは思いますが
結構色んな問題があるという事を
知っていただければ幸いです。

あー長い!仕事しないと。まじまずい。

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