たなかあさこ

三重県出身。詩と音楽をこよなく愛する一児の母。育休中です。 noteでは学生時代の創作…

たなかあさこ

三重県出身。詩と音楽をこよなく愛する一児の母。育休中です。 noteでは学生時代の創作物、エッセイ、日記、イラストなど楽しく投稿していこうと思います🌿

最近の記事

さよなら半月【詩】

まるで葡萄のような 甘くてまあるい音の粒 君がコントラバスで弾く「愛の挨拶」は 放課後の教室を美しいものにしている こんなにも易々と 頭の中をいっぱいにされてしまうのは 君の奏でるものだからでしょうか 空間に浮かぶ音符たちを ひとつひとつ手のひらに集めて 皮を剥き、口の中へと運んでいく ああつらいな 私は早くここを出なくちゃ 君を待ってる人がいるから いつも近くに君はいるけど 私の好きなこの音は いつでもきっとあの人のため 夏の夜は長いな このまま明けないんじゃないかっ

    • 息を止める【短編小説】

      まだ眠り続けている君にそっと触れる。台風一過だ。大嫌いな快晴だよ。 カーテンから洩れ入る強く真っ直ぐな光。このままでは部屋にいてもきっと日焼けをしてしまう。そう思うほどよく晴れた空だ。 私は午前の講義を終えて、何もない午後を迎えた。大学からアパートへ戻る途中、懐いている野良猫が私にすり寄ってきてそのまま一緒に帰宅してしまった。 私は昼食を取る気にならなかったが、野良猫はお腹を空かせていたらしく私のことをじっと見つめてきた。いつものことだ。 しかしキャットフードを常備してい

      • 冷たい夢【詩】

        青い草を踏み分けて 君を見つけると 手を伸ばして掴んだ とても安心していたんだ 一緒にいられたら あとはどうなっても大丈夫なような そんな気持ちが生まれていたんだ 常に存在していた 私の中の 君という光 ちゃんと私を理解しようとしてくれる 唯一の人だと思っていたんだ どうして こうなってしまったんだろう ここにあるのは青い花 君はどこにもいなかった つらいことがあったら 君のことを思い出すようにしていたのに 今では空しくなるだけだ どうしようもない思い出の中で 私は

      さよなら半月【詩】