悪霊

20代半ばのことだ。
寝ていたら、嫌な予感がした。近くに悪霊がいる。

たいていの霊はスルーするので、今回もそうかもしれないと思い、油断した。
足元からゆっくりと登ってきた。かすかな重さと、ただならぬ霊気を放っていた。若い男。例えるならば、映画『シャイニング』で主演を務めたジャック・ニコルソンの怪演がかわいく見えるくらい、そのくらい真に迫る様子だった。
その悪霊が私の顔の前あたりまで来たとき、ニヤッと笑いながら、その手は私の首を絞めた。思わず、布団ごと投げ飛ばした。「いい加減にしろ!!!」怒鳴ったことを覚えている。その時は、そのまま逃げるようにして、壁の方へ消えていってくれたので、よかった。

20代になって、霊に襲われることが増えた。彼らにとって、この霊媒の身体は魅力があるのだろう。使いやすいのだ、きっと。乗っ取って使いやすい。他には思いつかない。

だが、守らねばならない。この身体が、他の生きている人間にとって凶器とならないように。

text by まるこ


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