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2024年1月14日に聴いた落語備忘録

表題のとおりです。
新春初笑い!!! 春風亭小朝・春風亭一之輔・桂宮治 三人会」(北とぴあ)と、
鈴本演芸場 正月二之席(夜の部)
を見てきたので、覚えていることを書こうと思います。

三人会
・春風亭一之輔「加賀の千代」
昭和の新作だからか意外と聴く機会がない「加賀の千代」。
一之輔の「加賀の千代」はネットでも見られますが
隠居さんが完全に甚兵衛さんのファンボーイになっていて、そのあたりのくすぐりがとにかく面白い。こういう、現代人が面白がれる(感動できる・共感できる)ところに、落語を橋渡しする小技が、一之輔は上手い。こういったホールでやる落語はチケット取りにくいですが、寄席に精力的に出てくれるので、ぜひ生で見たい落語家ですよね……。

・春風亭小朝「源平盛衰記(扇の的)」
扇の的を講談チックに話しながら、時事ネタを随所に散りばめて、くすぐり続ける噺です。この手の噺は軽視されがちなんですが、これも(これこそ)落語ですよと、さらっと出してくれる人がいることは心強いですよ(しかも超絶技巧でな……)。
小朝は、自分の溢れる才能や技術、知識を雑に(よく言えば自然体に)使ってる感じが良いですよね。ボクは現役の落語家だと、小朝がいちばん談志っぽいと思っているんですが、そういうところ(そういうふうに見せるところ)だと思います。がんばって談志をやろうとされると、痛いですし、それは談志じゃないのでは?となる……。

・桂宮治「紺屋高尾」
ボクは基本的に落語協会の寄席にしか行かないので、この会は渡りに船という感じだったのですが……これはちょっと微妙でしたね。
工夫やくすぐりが面白すぎて、紺屋高尾の本筋が足を引っ張っている(まではいかないが、バランスが悪い)のでは?となりました。
同情の余地はあり、宮治は基本的にパワータイプの落語家で(そんな言葉あんのか?でもいるじゃん、パワータイプの落語家)、しょうもない噺はべらぼうに上手いし面白い。でも、この三人会だと、たまたまトリになってしまったので、トリに相応しい落語をやった結果のコレと考えると……小朝が悪いということになるのでは?!
でも、今振り返ると、結構不思議な味で面白かったかもしれん……

ところで、北とぴあの椅子とホールの作りがひどすぎて、腰をいわして、三日間ロキソニンテープ生活だったんですが……。

鈴本正月二之席 夜の部

・林家つる子「やかん」
上手すぎる。三月下席で真打昇進(抜擢)なので、実質真打ですよ。二つ目の枠で出るのはズルじゃないかと。有馬記念に軽斤量で出る三歳馬ですよ。生で観るのは初めてでしたが、あんまりにも良かったので、真打昇進披露興行はぜひ行きたいと思いました……。

・入船亭扇遊「狸賽」
たまに動物モノで異様な適性を見せる落語家がいますが、この狸賽、妙に面白かったですね……。

・古今亭文菊「熊の皮」
恐妻の嫌さのディティールに笑ってしまう。

・林家きく麿「あるあるデイホーム」
落語って本当に懐が広いですね……!と心胆寒からしめる怪作。
新作落語なんですが、新しくデイホームに入居したぺぺ桜井に、取り巻きの女性たちを奪われてしまった老人が、他の老人の協力を得て、デイホームの演芸会で、あるあるネタを披露するというものなんですが……。
出来損ないの錦鯉みたいなネタが、尺の2/5くらいを占めてるんですよ。
恐ろしいですよね。これが通るのか……!と。
この後出てくる馬石師匠が「同期でね、昔は古典とかやってんですよ……信じられないでしょ?」と、呆れてたのもまた味。
寄席はたまにこういう事故にあえるからたまりませんね。良かったです。

・隅田川馬石「湯屋番」
番台で妄想ひとり上手を繰り広げる若旦那を、男湯の客が実況してやいのやいの言うのところをフォーカスしてるのがちょっと現代風。原典の面白くないところをカットして、我々の感性に響くところに焦点を当てる妙。新作をやらずとも、単に古典をなぞるだけではないというわけですな。これも新味。ボクの席の後ろの若い女性がめっちゃウケてたのも、味。(ちょっとゲーム実況っぽい楽しみ方なんだよな、この湯屋番の客)

・橘家文蔵「馬のす」
遅刻しそうになって、時間調節が効く「馬のす」をさらっと演って帰る!これですよ。当人と噺のチョイスと演り方があんまりにも一致してるので嫌味がない。枝豆食うシーン(生々しい)で調整をあからさまにするのも、味。この後出てくる柳家喬太郎師匠に「昼の部の左龍が馬のす演ったのに、根多帳見ないで馬のすを演る」と暴露されているのも味。

・柳家喬太郎「白日の告白」
ほとんどマクラ。マクラの暴力。ありがてえ~。
トリだからこそ、トリに相応しい演目が求められそうなもんですが、10日間やる寄席は、こういう日があっても良いわけで、文句を言うのは野暮ってもの(別に文句もないですが)。
「白日の告白」気の利かない彼氏が、同僚に教えてもらったバーに彼女を招待したときの「あたしタッチパネルのない店、久しぶり」に妙に笑ってしまった。大衆店=タッチパネルでさらっと表現するの、味。この部分は現代ナイズされたくすぐりだよな……。


以上。
職場の福利厚生に落語のレシートが使えそうなことに気づいたので、来年度はよりバンバン聴きに行きたいと思います。

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