プッシュ戦略とプル戦略[前編]
マーケティングとプロモーションの違い
“コンテンツ・マーケティング”にて、
『インバウンド・マーケティングは、小売店のように、お客さんの入りを促すマーケティング。
コンテンツ・マーケティングは、インターネット上で、商品よりも先に、自らの価値を伝え、リファーラル(クチコミ)を誘発させるWebプロモーション』
と結びましたが、
・インバウンドマーケティングは、マーケティング
なのに、
・コンテンツマーケティングは、Webプロモーション?
と、混乱した方々もいらっしゃるようなので、久しぶりに、
マーケティングとプロモーションの違い
を明らかにしておきましょう。
マーケティングで代表的なフレームワークといえば、4P's(フォーピー)
Product(製品)
Price(価格)
Place(場所)
Promotion(プロモーション)
の4つの頭文字 P をとったマーケティング・ミックスの4要素です。
マーケティング・ミックスとは、
・4Pをミックスして考えましょうね?
・どれが欠けてもマーケティングは機能しませんよ?
ということですが、もともとは、
品質、デザイン、技術、ブランド、仕様、パッケージ、種類、サービスetc.
価格、コスト、支払方法、支払期限、優遇条件、割引、取引条件、競争etc.
立地、店舗、流通経路、流通形態、流通範囲、在庫、品揃え、陳列、輸送etc.
広告宣伝、広報、販売促進、人的販売etc.
これら全部をミックスして考えようという理論を、マッカシー教授が4Pに分類しました。
いわば、とらえどころのないくらい範囲が広かった商売の仕組みを、わずか4つに体系化したわけです。
4Pがマーケティングの基本であることを知っている我々からすれば当たり前なことですが、
4P'sが無かった頃に、商売の仕組みを体系化したのですから、ものスゴイ功績ですよね。
このように、プロモーションは、マーケティングに含まれますので、
マーケティング = プロモーション
ではなく、
マーケティング > プロモーション
の構図であることが、お分かりになるでしょう。
プロモーションとは?
プロモーションとは、促進、推進、振興、助成で、売れるようにすることです。
マーケティングにおけるプロモーションは、
1)AD(Advertisement) = 広告(商品を売るために知らせること)
2)PR(Public Relations) = 広報(理解を深めるために知らせること)
3)PS(Personal Selling) = 人的販売(売れるように人が動くこと)
4)SP(Sales Promotion) = 販売促進(上記三つとは別に、売れるようにする
こと)
の4要素があります。4つの頭文字をつなげればAPPS(アップス)になりますが、アップスというマーケティング用語は無いため、
4つのプロモーションを覚えるのに使うぶんには自由ですが、プロ同士が使う共通言語にはなりません。
「なーんだ。プロモーションの和訳が“促進”だったら、
Product(製品)
Price(価格)
Place(場所)
→ Promotion(プロモーション)
じゃなく、
Product(製品)
Price(価格)
Place(場所)
→ Promotion(促進)
に(日本語に)統一すればイーじゃん」
と思われしところ、プロモーションの販売促進(セールスプロモーション)とゴチャ混ぜになって、紛らわしいので、
Promotion(促進)
ではなく、敢えて英語のまま、
Promotion(プロモーション)
として広まったのではないでしょうか?
実際、
「マーケティングのプロモーションとは、販売促進のことである」
と誤解しているサイトに遭遇することがあります(販売促進はプロモーションの一部であって、販売促進 = プロモーション ではありません)
ちなみに筆者が、どうしてもプロモーションを和訳しなければならない場合は、
Promotion(推進)
と訳しています。
プル(引く)戦略とプッシュ(押す)戦略
では、どうして、
・インバウンドマーケティングは、マーケティング
なのに、
・コンテンツマーケティングは、Webプロモーション?
なのでしょう?
答えは単純。インバウンドマーケティングは、アウトバウンドマーケティングと一対だからです。
アウトバウンドマーケティングは、プロモーションのみならず、
・製品(Product)
や
・価格(Price)
や
・流通(Place)
に
関わります。
ここ2~3年のうちに出現したインバウンドマーケティングを、マーケティングでは、古くから、
プル(引く)戦略
と呼んでいました。
インバウンドマーケティングのことを「最新のマーケティング」と評する人もいるようですが、最新でも何でもないんですねえ(笑)、じつは。
その反対に、アウトバウンドマーケティングという新語をマーケティングでは古くから、
プッシュ(押す)戦略
と呼んでいました。
このプッシュ戦略とプル戦略も、マーケティングでは、代表的な戦略です。
(筆者の理解では「プッシュとプルは分けて考えられない=不可分」と思っていますが)
プッシュ戦略とプル戦略は、こちらの図を
http://tinyurl.com/pv3yon6
ご覧になって、目で見て理解するほうが、わかりやすいでしょう。
よく、プッシュ戦略は「川上から川下へ」、プル戦略は「川下から川上へ」と
いわれる理由を視認できると思います。
プル戦略とプッシュ戦略は一対
プッシュ戦略とは、
1)加工メーカー
↓
2)卸 売
↓
3)小 売
↓
4)お客さん
の流れで、メーカーは卸売へ、卸売は小売へ、小売はお客さんへ、買ってね~と積極的に働きかける戦略のこと。
この流れ自体が、マーケティングでいうところのチャネル(プレイス/流通)で、当然、
Product(製品)
も
Price(価格)
も
Promotion(プロモーション)
も
絡んできます。新製品は宣伝しやすいし、安くしたほうが売れますからね。
一方、プル戦略とは、
1)加工メーカー(広告)
↑ ↓
2)卸 売 ↓
↑ ↓
3)小 売 ↓
↑ ↓
4)お客さん←←←
の流れで、お客さんのほうから、買いたくなるように働きかける戦略のこと。
要するに「テレビで見た○○が欲しい」と需要を喚起するために、広告を出すことです。つまり、
広告を出すこと = プル戦略 = インバウンドマーケティング
の構図ですから、プル戦略 の み 切り離せば、インバウンドマーケティングも、コンテンツマーケティングも、プロモーションになります。
しかし、ビジネスの実際では、プッシュ戦略とプル戦略を切り離せるものではありませんから、
プッシュ戦略とプル戦略(インバウンドとアウトバウンド)は、マーケティング戦略として、一対になっています。
余談ですが、プル戦略の広告に相当するのが、コンテンツマーケティングでは検索や被リンクになります。
広告は、多額の費用がかかりますが、検索や被リンクは、基本的にタダなので、
ぶっちゃけ、お金をかけずに認知を拡大できるのがコンテンツマーケティングです。
[後編] 日清カップヌードルの例 へ続く
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