農業型と林業型の混在は経営戦略を揺るがす[後編]

資金が無くなって倒産する原因の第一位は、処女作か何かに書いた通り、企業(会社)は、斃れよう、斃れようと傾斜する生き物です。

なので、斃れないよう、売上という三度三度の食事を与えて、利益という栄養に換え、資金という血液にして循環させます。

社員が関与できるのは、利益まで。そこ(利益)から先は、ヒト・モノ・カネを動かす経営者の仕事になります。

カネ、すなわち、財務戦略(資産、負債、損益、キャッシュフローの管理等々)です。

通常、社員の皆さんが「来月、給料出るかな?」と心配することはありませんが、

資金力に乏しい(お金がない)経営者は「来月、給料出せるかな?」と、夜も眠れません。


会社がヤバイ(左前の経営)だから、資金(お金)がないのではありません。

右肩上がりに売上が伸び、利益も増え、資金が回っていれば、問題ありませんが、成長していればこそ、資金が足りなくなります。

(なので、教科書的には、株式会社の場合、株式を発行して株主を募り、資金を集めます)

成長過程の企業のみならず、売上が低迷している企業も、落ち込んでいる企業も(落ち込んでいればこそ)、資金が足りなくなります。


いずれにしても、企業は、資金が足りなくなる宿命を背負っていますので、

・維持する(成長させない。支払いを増やさない)路線を採る経営者もいれば、

・大きな金額を動かさない(安全な)スモールビジネスを選ぶ経営者もいます。

どういう経営を目指すも経営者の自由ですが、資金が無くなって倒産する原因は、

販売不振(営業不振)= 売れない

が、昔から、不動の第一位です。

【林業型】と【農業型】の混在は、経営戦略を揺るがす

そこで、商品を売ろうと、【農業型】【林業型】【水産型】※ に共通する、

  第1段階)知らせる = 告知 = Attention(注意)= 利益追求 = 利

から始めることになります。

【農業型】既存顧客 維持型

第1段階)知らせる = 告知 = Attention(注意)= 利益追求 = 利
     ↓
第2段階)おしえる = 広報 = Interest(関心)= 理解強化 = 義
     ↓
第3段階)すすめる = 販促 = Desire(欲求)= 利益追求 = 利
     ↓
第4段階)売る = 販売 = Action(行動)= 利益追求 = 利

【林業型】新規顧客 開拓型

第1段階)知らせる = 告知 = Attention(注意)= 利益追求 = 利
     ↓
第2段階)すすめる = 販促 = Desire(欲求)= 利益追求 = 利
     ↓
第3段階)売る = 販売 = Action(行動)= 利益追求 = 利

【水産型】新規顧客 開拓型

第1段階)知らせる = 告知 = Attention(注意)= 利益追求 = 利
     ↓
第2段階)売る = 販売 = Action(行動)= 利益追求 = 利

既存客や紹介者の増加と維持を見越した【農業型】から入る企業は稀で、ほぼ、高度経済成長期に営業活動の見本として定着した【林業型】から入ります。


【林業型】から入ると、営業活動は、新規重視の【林業型】から、既存顧客を維持する【農業型】へ、ゆるやかに推移します。

なぜなら、既存客が増えるからです(マンション販売のような売り切り商品=徹底した林業型を除く)

さらに、大企業vs大企業の取引や、新規営業しなくても親会社から仕事が来るようなレアケースを除くと、既存客のみでは、売上が伸び悩むようになります。

そこで、経営者や部門長は、新規客を増やすべく、【林業型】を強化する一方、

早い売上(既存客からの売上)も命じます。【農業型】です。

こうして、短期的に売る繰り返しの【林業型】と、長期的に既存客を維持する【農業型】が混在します。

やることが異なる戦略の型が混在するのですから、営業マン個人は大変です。


営業マン個人が大変であっても、売上さえ伸びていれば、経営者は一安心です。

別段、営業戦略の型(農林水産型三つの型)を知らなくても、経営できますが、

【農業型】と【林業型】が混在すると、のちのち、営業戦略の上位に位置する(ヒト・モノ・カネの)経営戦略まで揺るがしかねません。

【林業型】と【農業型】の混在はヒト(人事戦略)を揺るがす

【林業型】から【農業型】へ推移し、混在すると、営業マン個々に、それぞれ、自分のやり方が確立します。

資質の有る無しに関らず、勘や経験で動く営業マンもいますし、作戦を考えて動く営業マンもいます。いずれにしても、

・自分のやり方は、他人とは違う

・当社のやり方は、他社とは違う

・当社の業界は、他業界とは違う

こうして、営業戦略を立てた覚えがなくても、うちだけの営業戦略、自分なりの営業戦略ができあがります。


うちの戦略ですから、ここから抜け出すなんて、並大抵のことではありません。

個々の営業マンそれぞれの営業戦略(経営戦略から見れば営業戦 -術-)で動くようになると、

もはや、経営者であっても、営業組織をコントロールしにくくなります。

数字さえあがっていれば、直行で朝礼に参加しない営業マンがいても、会議に参加しない営業マンがいても、不問。

営業管理が必要なのは、最終的には、売上を伸ばすためですからね。売上さえ伸びていれば、問題なし。

やがて、各自に動き、ぶっちゃけ、言うことを聞かなくなります(苦笑)

仕入れやすい商材ならば、独立していく(優秀な)営業マンも現れるでしょう。

ついていく顧客も現れます。


営業権じゃ何じゃかんじゃ言っても、顧客が味方についている営業マンは強し。

そりゃそうですよね、お客さんから言わせてみれば「当社の発注先は、当社が決める」ってナもんです。

こうして、どこの企業にでもありそうな人事(ヒト)の問題が噴出します。

このように【林業型】と【農業型】の混在は、ヒト・モノ・カネの経営戦略のうち、ヒト(人事戦略)を揺るがしかねません。

人事のみならず、新しい人材を採用するとなると、財務戦略(広告費や人件費)にも影響します。

当り前な連鎖で、地縁や血縁といった何らかの事情でも限り、安月給じゃ誰も来ませんよね?

さらに、どこの企業にでもありそうな人事戦略(ヒト)の問題は続きます。

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