顧客七階層/後編
お客さまを七つに分解して費用対効果を高めよう
顧客七階層とは、お客さまを七段階に分類したピラミッド構造のことで、拙著の処女作に原型が載っています。
なぜ、七つに分解するのか?というと、費用対効果を高めるためです。
営業にしても、販促にしても、プロモーションは、最終的には値引き行為ですから、ご購入の代金に応じたプロモーションを展開します。
マイレージが(BtoCでは)分かりやすいでしょう。
たくさん乗る顧客には、それなりに。あまり乗らない顧客には、それなりに。
マイレージは理解できても、これをBtoBの営業活動に当てはめたとたん、理解できなくなる(人がいる)不思議。
具体的には、年間売上1,000万円の顧客も、1万円の顧客も、同じように訪問し、同じように交通費を費やし、同じように時間を配分する不思議。
なぜなら、
「お客様は、平等」
だから(と信じ込んでいる節があるため)です。
お客さまは(人道的には平等ですが、経済的には)平等ではありません。
なので、七つに分解して、費用対効果を高めます。
極端な話をすると、名刺交換して売れそうもなければ、パンフレット一部さえ渡さなくて構いません(乞われれば渡しますが)
パンフレットの代わりに、商品を売るのではなく、営業マン個人の信用を売ります。それは、A4用紙一枚あれば充分。ハガキ一枚あれば充分です。
余談ですが、パンフレットを渡さなければ、改めて商品説明させて頂く二度目のアポイントを取る口実になり、その時に、パンフレットを渡します。
二度目のアポイントが取れるということは、需要が顕在化しつつある証拠ですからね。
二度目のアポイントが取れなければ、商品説明は必要ないということですので、一方的に接触し続けて、売れる時期を待ちます。
顧客七階層の下四層はAIDAの法則と一致する
七段階の顧客は、
1.最優良顧客 … 多額の、あるいは、頻繁に、大量に買ってくれる一部の顧客。
2.優良顧客 … 平均以上に買ってくれる少数の顧客。
3.一般顧客 … 平均の多数を占める顧客。
4.新規顧客 … 初めて購入した層。二度と買わないお客さんも多い。
5.見込客 … 取引交渉する層。価格を尋ねる。見積もりを取る。
6.潜在客 … 関心を示す層。資料請求する。手に取って見る。現地を訪ねる。
7.認知客 … 商品を知っている層
の七段階に分類され、新規客から下の四階層は、AIDAの法則と一致します。
A(行動)□□□□4.新規客
D(興味)□□□□5.見込客
I(関心)□□□□□6.潜在客
A(告知)□□□□7.認知客
AIDA(あいーだ)の法則とは、人が、商品を購入するまでにたどる心理フローの英単語の頭文字を繋げた造語で、AIDAモデルとも、AIDA原理とも呼ばれます。
□1.最優良顧客
□□2.優良顧客
□□□3.一般顧客
□□□□4.新規客
□□□□□5.見込客
□□□□□□6.潜在客
□□□□□□□7.認知客
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲望)→Action(行動)
このプロセスに従って、人は買い物することを、米国の広告専門家のセント・エルモ・ルイス氏が1898年に唱えました。
時に日本は明治時代、第三次伊藤博文内閣が組閣された年で、100年以上も前です。
古くて、シンプルながら、人の購買行動を鋭く突いているため、今でもAIDAを教え説く専門家は多く、販売戦略の基本になっています。
AIDAは“アイーダ”と読み、たまに“アイダ”と読む人もいますが、会話の中でアイダと言うと、人名(相田さんや会田さん)と同じ発音で紛らわしいためかどうか、アイーダと読むのが一般的です。
ついでながら、AIDAの派生形として
AIDMA(アイドマ)
AIDAS(アイダス)
AIDCA(アイドカ)
AIDCAS(アイドカス)
があります。MはMemory(記憶)、CはConviction(確信)、SはSatisfaction(満足)のことで、たとえばAIDMA(アイドマ)は、
Attention(注目)…商品を知る
↓
Interest(関心)…関心を持つ
↓
Desire(欲望)…欲しくなる
↓
Memory(記憶)…記憶する
↓
Action(行動)…買う
の五段階になります。
顧客七階層のピラミッド構造を保つのが健全な経営
AIDAの法則を、顧客七階層の新規客以下に照らし合わせると、
Attention(注目)… 商品を知る … 7.認知客
↓
Interest(関心)… 関心を持つ … 6.潜在客
↓
Desire(欲望)… 欲しくなる … 5.見込客
↓
Action(行動)… 買う … 4.新規客
になりますので、新規の営業活動は『告知から始まる』ことがお分かりになるでしょう。
告知する方法は、広告、広報、販促、営業の4つしかありません。
それが、マーケティングの4P'sの中の、プロモーションです。
平たくいえば、知らせる数を増やすために、広告を出したり、新聞やテレビ等のマスメディアに取り上げてもらったり、
展示会に参加したり、Webサイトを公開したり、ダイレクトメールを送ったり、営業活動で一軒一軒お知らせして歩きます。
4つのプロモーションそれぞれに役割は異なります。
たとえば、商品 の み 知らせるのは広告の役割であって、営業の役割ではありません。
一方、既存客への営業力を高めるには、数ではなく、質を重視します。
質とは、
1)買った量(Volume)
2)買った回数(Frequency)
3)買った金額(Monetary)
の三つ。このVFMに照らし合わせると、既存客の質を高めるには、
4→3 新規客(二度と買わない可能性あり)を、一般顧客(リピーター)化する
3→2 一般顧客のVFMいずれかを増やして、優良顧客化する
2→1 優良顧客を、最優良顧客にする
□1.最優良顧客
↑
□□2.優良顧客
↑
□□□3.一般顧客
↑
□□□□4.新規客
最終的には、最優良顧客を増やすことに尽きますが、99.7%を占める中小企業の中には、数社の優良顧客のみ頼りきりで、
そこからの注文が途切れると、たちまち、経営が不安定になるケースが少なくありません。
なので、顧客七階層のピラミッド構造を保つのが、健全な経営の礎になります。
新規客と既存客は分けて(AIDAとVFMで)考える
このように、取引前と、取引中のお客様は、分けて考えなければなりません。
既存客は、VFMの三角形で考える。
新規客は、AIDAの等脚台形で考える。
□1.最優良顧客
□□2.優良顧客
□□□3.一般顧客
□□□□4.新規客
□□□□□5.見込客
□□□□□□6.潜在客
□□□□□□□7.認知客
その境界線は、新規客であることが、お分かりになるでしょう。
新規客以上と、新規客以下は、目的が(AIDAとVFMで)異なりますから、やること(施策)も異なります。
まとめましょう。
TVキー局のように、多額の広告費や、制作費を支払える新規客が、湧いて出てきそうにない業種業態や、メーカー系列の下請工場を除けば、
「新しい顧客(1~3のリピーター)の数を増やす」
のが、経営の基盤であり、営業活動の目的です。
財務や、人事や、ステークホルダーも大切ですが、経営価値の重きを、
・某IT企業のように、株主に置くのか、
・某レジャー産業のように、仕入れ先に置くのか、
・某高級旅館のように、従業員に置くのか、
・お客様に置くのか(お客様とは、誰のことなのか)
を決めるのは経営者であり、その方針に従って、会社は、良くも悪しくも動きます。