読んで楽しむマーケティング[伊勢うどん] 前編

伊勢うどんに秘められし天地人を活かしたマーケティング

ご存知ですか?伊勢うどん。

召し上がったことがある人の話によると、

1.めんが太い。直径1cm超の極太(鉛筆!よりも太いんですケド)

2.めんが柔らかい。麺というより、のびない“餅”
(良くいえば、ふんわりモチモチ。悪くいえば、コシがなくてブヨブヨ)

3.ゆで時間が長い(60分!前後)

4.つゆなし(麺のみ。たれを回しかける、いわゆる、ぶっかけ)

5.たれが黒い(色の濃い溜り醤油がベース)※たまり醤油は東海三県の特産品

以上の5点が特徴でしょうか(南勢の皆様、間違っていたら、教えて下さい)

百聞は一見に如かず。うどんの画にインパクトがありますよ。
https://www.jalan.net/news/article/182602/
(タレなのか?ツユなのか?どっちともいえないうどんも有り)


ちなみに、たれ、つゆ、汁の違いは、英語にすると分かりやすくなります。

 たれ(=ソース)、つゆ(=スープ)、汁(=ジュース。ex.果汁)

この解釈法でいくと、味噌汁は、味噌ジュースではなく、味噌スープ。

なので、味噌つゆが正確です(実際に味噌汁等の椀物をつゆと呼ぶ東北地方もあります)が、

そこはそれ、「明日」を「あした」と読んでもよし、「あす」と読んでもよし、どっちでもいい割りには、決して、「めいじつ」や、「あかひ」とは読まない、日本語らしい曖昧さですよね。以上、余談でした。

この伊勢うどん、じつは、天の時を捉え、地の利を得、人の和で成功に導いた

天地人を活かしたマーケティング

といっていい郷土料理にして、町おこしにして、ご当地グルメ。その理由は?

1.時間が育んだ「天の時」~のびた麺、ゆで時間の長さを逆手にとった、強み。

2.ネーミングから始まった「人の和」~単なるうどんを、ご当地うどんに。

3.伊勢神宮とサミット開催地の「地の利」~伊勢市民、伊勢市、伊勢うどん店

4.メディアが一体となったプロモーション

では、一つ一つ見ていきましょう。

こしの無さ(のびた麺)、ゆで時間の長さを逆手にとった伊勢うどんの強み


伊勢うどんの始まりは、約400年前、伊勢市(三重県中部)に開店した橋本屋うどん店だそうです。

徳川の世をまたいで昭和に至るまで、約350年間、伊勢市民にとって、うどんは、柔らかい麺で、スープが無くて、具なしの「素うどん」だったそうです。

350年間も“伊勢”うどんという、ご当地ブランドは、存在しなかったんです
ねえ。

集団の中にいて、慣れてしまうと、外から見た良さに、中にいる人は、気づかないもの。町おこしの盲点です。

ご当地ブランドの伊勢うどんが確立するのは、約50年前、昭和40年代に入ってからだそうですが、詳しくは、横道にそれるタメ、次号へ譲るとして、

うどんは、こし(弾力)のある麺が一般的ですよね?

こしがなければ「のびている」と嫌われます。

その、こしの無さ(弱み)を、伊勢うどんは、売り(強み)にしています。

そんなことが(弱みを強みに逆転することが)できるのでしょうか?

できます。理由づけ次第です。由緒(いわれ)や、理由は、価値を帯びます。


ベネフィット【1】柔らかいから、消化しやすく、胃にやさしい

江戸ッ子にとって、伊勢神宮へ詣でるのは、一生に一度の悲願だったそうです。

その本質は、信仰というよりも、旅行。

関所を通過できる通行手形が発行されるため、東海道中の箱根で温泉に浸かることも、帰路を中山道にとって善光寺に参ることもできました。

その距離(片道)1,000km。一日あたり40km(フルマラソンの距離相当)を歩く計算になります。

その、疲れた参拝客の胃に優しい食事として考え出されたという説があります。

それだったら「粥のほうが優しいだろ~」と思うのは、ひねくれ者の筆者ダケでしょうか(笑)

ベネフィット【2】お客様を待たせない

茹でるのに一時間かかるため、めんを茹で置きしておいて、注文後に、温めるだけで、すぐ出せる早さ。

「細うどんだったら、茹で置きしなくて済むだろ~」と思うのは、ひねくれ者の筆者ダケでしょうか(笑)


ベネフィット【3】お年寄りの参拝客でも大丈夫

のどごしで食べられる柔らかさ。のどに詰まらせる心配ありません。

だったら「豆腐等の柔らかい具材を使った、椀物のほうがいいだろ~」と思うのは、ひねくれ者の筆者ダケでしょうか(笑)


ベネフィット【4】団体様でも大丈夫

最大80人分の麺を茹で置きしているので、団体客をさばける。

だったら「茹でてあるチルド麺(うどん玉)か冷凍うどんだろ~」と思うのは、ひねくれ者の筆者ダケでしょうか(笑)


ベネフィット【5】茹で置きするための太うどん

時間をかけて茹でたあと、茹で置きするのに適した、太麺。

だったら「地理(東海三県)的に、きしめんだろ~」と思うのは、ひねくれ者の筆者ダケでしょうか(笑)


まとめますと、茹で置きしておいた麺と、たれ(スープ要らず)の丼鉢ものは、

【お店側のメリット】大勢の来店客を、一気に、素早く、さばける

【お客側のメリット】タイトな旅程(参拝スケジュール)に追われて、疲れていても、

飲むように食べ終えられる

という、双方に「早さ」というメリットがある料理(だから広まった)と結論づけられます。

伊勢うどんの本質は、スピードだったんですねえ。

読んで楽しむマーケティング[伊勢うどん]後編へ続く


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