マーケティング認定テスト/中級編

(初級編のおさらい)

前回は、初級テスト問題『プロモーションの成功事例を述べよ』
について、
1.プロモーションはプロダクト・プレイスメントが主流になるという独自予測と、
2.プロダクトプレイスメントの製品の事例として、アップル社のパワーブックを挙げ、
・プロダクトプレイスメントの媒体の事例として、Sex and The City(SATC)
を挙げ、
3.SATCに登場する他社の製品の事例(メルセデス車や日清カップヌードル)
を挙げ、
それら三方向からプロダクト・プレイスメントを回答に取り上げた。


この回答が正解になるかどうか分からないが(そもそも正解があるのかどうかわからないが)、現在、最も効果的なプロモーションはTVCMを中心としたプロモーションであり、しかしながらTVCMを飛ばし見できる時代になったということは、TVCMに代わるプロモーションとしてプロダクト・プレイスメントが最有力と考えられる。

もちろん、メルセデスが「SATCのプロダクト・プレイスメントに2億円を投じた結果、何台のベンツが売れ、いくら儲かった」などとは一切公表していないし、公表するわけがない

施策前後の数値を比較できないため、成功事例と呼べるかどうか疑問は残るが、もしも数値まで提示しなければならない設問だとしたら、難解きわまりないといえよう。


その数値を知る者は内部の関係者のみであろうから、もしも数値を挙げられるとしたら企業秘密の漏洩に他ならないし、それを回答として求めるのであれば設問自体がナンセンス甚(はなは)だしい。

なぜならば、企業秘密を漏洩する者が、マーケティングの認定試験に合格するハズがないからである。

よって「こんなテストに正解があるのか」との疑念と、「こんなテストに正解したからといって、実効力のあるアドバイスが可能か」との疑問は拭えない。

その疑義を追究する前に「まずは答えてみてから」との着想からスタートした企画だけに、動機は不純で挑戦的で、そうした姿勢は嫌われがちで、読者離れを誘発する危険を孕んでいるが、それでも構わず今回も続編をお届け。


問題『市場調査の成功事例を述べよ』

この一行が設問である。『市場調査の成功事例を述べよ』

さあ、あなたは何と答えるであろう。

残念ながら、筆者は正確な事例を答えることができない。

定性・定量を問わず、数多くの調査を請け負って請求書を出してきた筆者には請求書の枚数だけ成功事例がある。自身が調査の体験者であるし、調査に成功しなければ請求書を出せなかった。たとえ出しても突っ返された(笑)

しかし、当然ながら、その事例を公開するわけにはいかない。古い話であれば曖昧に脚色してお伝えしたこともあったが、社名も商品名も案件も状況も封印を解くことはない。マーケティングに従事する者ならば当然であろう。

ではナゼ、日経流通新聞や宣伝会議などの媒体に調査の記事が載るかといえば、取材だからである。


企業は公開できる範囲のみ公開する(メディアに載って不都合のない範囲のみ公開する)し、記事には記者の主観と憶測が混入する為、100%真実かというと、必ずしもそうとは言い切れない。

内情を知る立場で記事を読むと「へえ。こういう表現になったんだ」と違和感を覚えることがある。これは、編集が関与するため仕方のないことで、他にも記事体広告に同じことがいえる。著作も然り。

もう一つは、調査結果を自主的に発表することでニュースや記事に取り上げてもらうノンペイド・パブリシティ目的である。

よく、TVニュースや新聞紙上で、
「○×社の調査によりますと云々」
という調査結果を見聞きすることがあると思う。

あれは、調査結果を発表するリリースが、会社や商品の広報(パブリシティ)になるのである。

発表が調査会社の場合は「○×リサーチ社の調査によると云々」
食品メーカーの場合は「○×食品が調べたメニューで最も多いのは云々」

これらの結果発表は慈善行為ではない。たれも、慈善で調査結果を発表する営利追究団体は、ない。当り前の話である


調査を発表する裏側には、
・記事に取り上げてもらいたい企業の思惑

・ネタがほしいメディアの思惑
など、
さまざまな意図が錯綜している。その調査結果や分析が100%正しいかどうかは二の次といっていい。調査結果を鵜呑みにすることなかれ(笑)

筆者の回答『ペプシチャレンジ』

ひとくちに市場調査といっても、さまざまな調査があるが、設問に指定がないということは、いかなる調査の結果でも良いのだろうと解釈して、市場調査の結果をプロモーションと連動させて伝説的なまでになった例を挙げるとすれば、ペプシコーラの比較調査(ペプシチャレンジ)を忘れるわけにはいかない。


ペプシコーラとコカコーラを飲み比べ、どちらが旨いか判定してもらう調査である。
半数以上がペプシコーラを選んだ。コラコーラのファンまでがペプシコーラを選んだ。
その結果をペプシはCMにして放映した。

映像を見ると、街頭インタビューの形式になっているが、これはCM撮影用で、最初の調査はCLT(セントラル・ロケーション・テスト)だったという。

《解説》CLT(セントラル・ロケーション・テスト)
サンプルとなる被験者を会場に集めて調査する方法。ペプシチャレンジの会場はテキサス州で、テキサス州では、ペプシコーラのシェアが急拡大したという。

この試飲調査と、CM放映の連動が、全米でのペプシの売上を伸ばした。


真相は、ネガティブキャンペーンの対象となったコラコーラのシェアを奪ったのではなく、話題性に釣られて初めてペプシコーラを飲んだ新規コンシューマがペプシのシェアを拡大したらしい。

日本では嫌われやすい挑戦的姿勢

調査結果を純粋に信じるならば、ペプシコーラの方が旨いのであろう。しかし、ペプシが調べてペプシが公表したのだから、データの改ざんとまではいかないとしても、話半分だと思って差し支えあるまい。

実際に飲み比べてみると分かる。10回中10回とも両者の違いを言い当てるのは、訓練しなければ、不可能に近い。筆者、やってみたから(笑)断言できる。

事実、日本でも、同じような比較調査を行ってCM放映した。2人に1人(50%)がペプシコーラを選んだという。当てずっぽうなのだから、妥当な線であろう。

このCMは日本初のネガティブキャンペーンであったが、コカコーラを名指しで貶(おとし)めるのは放送倫理に反すると批判が相次ぎ、それ以降は商品名をモザイク処理するようになった。


自社の商品同士を比較するのは構わないが、他社との比較は、日本人の好みに合わないのかも知れない。

余談だが、マーケティングの本場である米国では、大統領選にさえネガティブキャンペーンが用いられる。比較して初めて分かることがある。それを有権者が受け入れるのであろう。

余談に余談を重ねるが、その後も脚本を変えながらネガティブキャンペーンを続けたペプシコーラであったが、訴訟問題等でネガティブキャンペーンを中止せざるを得なくなり、日本でシェア拡大に伸び悩み、やっとコカコーラと同じチャネル開拓(自動販売機による販路拡大)に着手し始めたのは意外と遅くて、90年代に入ってから。

一方のコカコーラが早くから自動販売機を重要な販売チャネルとして位置づけシェアを拡大していったのは周知の通り。

人はイメージで買う

個人的な感想としては、ペプシコーラといえば、ボトルキャップのフィギュアやアメ車(コルベット)など、プレミアムを付加価値にしている印象が強い。

スターウォーズ、ガンダム、スーパーマリオなど、人気キャラクターのボトルキャップは、CtoCで取引されているくらいである。

こうした販促は、本国アメリカのペプシコ社でも行っているのだろうか?

どちからといえば、日本でペプシを販売しているサントリーの得意技ではないだろうか(ウィスキーにミニボトルをベタ付けする等)

また、2001年には「2001年宇宙の旅」という、宇宙旅行が当たるキャンペーンを展開した。

当時の宣伝会議の記事をハッキリ覚えているが、思い切ったことをするものだと関心した。東急エージェンシーの企画であった。ところで、あの宇宙旅行は実現したのだろうか?


商品の味を高めるよりも、どうして、このようなプロモーションに力を入れるのか?に対する答えがある。

ペプシコーラの米国本社の営業スタッフが調べたところによると、
「コーラは、味より、ブランドで選ばれる傾向にある」
ことがわかった。

ペプシコーラとコカコーラのように、商品が差別化できなくなると、人は、

           イメージで選んで買う
という証拠である。

何なら、目隠しして、ペプシコーラとコカコーラを飲み比べてみれば、いかにイメージで買っていたか実感できよう。

10回飲んでみて、何回当たったか、宜しければ教えて頂きたい。10回中、10回飲み当てられる人は、ゼロに違いない

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