お腹がすいたらスニッカーズ[後編]
カップヌードルの防御
[後編]から続く日清食品の余談ですが、日清食品は
「真似されれば、すぐ裁判沙汰へ持ち込む」
と一部の業界人や競合他社から不評のようですが、真似しづらくて文句をいうなんて、中国人もビックリの暴論。
日清食品としては、そりゃ、防御するでしょう。
有史以来、世界で初めて、日清食品が作ったインスタントラーメンを、後発のメーカーが真似た影響で、一時は、倒産の危機に追い込まれたくらいです。
競争原理が働き、価格が下がり、選択肢が増えるのは、買う側として、嬉しいもの。
しかし、真似が生き残り、本家本元が淘汰されるのは、如何なものでしょう?
真似には、新しい価値を生み出す創造力がありませんから、創造力のある本家本元が潰れると、もう、新しい価値が市場へ出にくくなります。
事実、もしも日清食品が潰れていたら、カップ麺は誕生したでしょうか?
そのカップヌードルを、日清食品が世界に先駆けて市場導入した時も、次々と後発メーカーが真似ました。
日清食品だって、いつまでもやられっ放しじゃありません、自己防衛のために提訴しました。かれこれ30年くらい前の話です。
その時に敗訴した競合他社が、今回また「夏は氷を入れてアイスで」と堂々と用途提案していましたね。
その競合他社が、今では日清食品の子会社になっているからでしょうか、それとも、食べ方の提案は、レシピ同様、知的所有権を取得しにくいからでしょうか、日清食品は黙して語らず。
白紙に絵を画くのは難しいものですが、画いてある絵に手を加えるのは易しいもの。
願わくば、業界内で足を引っ張り合うのではなく、業界が一丸となって新しい価値を創造してもらいたいものです。
インサイトに基づく用途提案
アイスカップヌードルは、食べ方の提案ですが、食べごろ(いつ食べるか)の提案も、用途提案です。
「お腹がすいたらスニッカーズ」のコピーで、そのまんま食べごろを提案しているのが、スナックバーのスニッカーズ。
間食としての菓子を、空腹にフォーカスして、いつ食べるか訴求しています。
http://snickers.jp/index.html
このスニッカーズ、まもなく販売中止になるそうなので、もしも、食べるのであれば、お早めに。
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPTYE81K3Y320120216
(ただし、中国産につき、メラミンには、ご注意を)
食べ頃、飲み頃というと、どうしても「おいしく出来あがる瞬間」に焦点を
あてがちですが、それは、作る側・売る側の視点。
それが間違っているということではなく、
「買う側の視点(おいしく食べたい瞬間)も切り口にしてみませんか?」
ということです。
スニッカーズは、空腹という、人間のインサイト※に基づいています。
※インサイト
http://marketingis.jp/wiki/消費者インサイト
アイスカップヌードルの「冷たく食べる」もインサイト。暑ければ、冷たい
ものを欲するのが、人間の根源的な欲求。
翻せば「お腹が空いた。空腹を満たしたい」や「暑い。体温を下げたい」と
いったインサイトの元では、スニッカーズだろうと、アイスカップヌードル
だろうと、何だってイーんです。問題は、
「お腹がすいたら、当社の商品」
「夏は冷たく、当社の商品」
といった切り口を、考えられるかどうか?
その切り口を考えたら、あとはテストしてみるだけ。
用途提案は、巨大メーカーにのみ許されたマーケティングではありません、町の肉屋さんが、
「お腹がすいたら、揚げたてコロッケ」「夏は冷たく、コールドチキン」
と店先に貼り出すだけ。その紙一枚が、用途提案になります。
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