あなたがメーカーのマーケッターだったら?後編

ファウンドリ(foundry)とファブレス(fabless)

自社工場を持たないメーカー、ファブレス(fabless)メーカー。

自社工場を持つメーカー、ファウンドリ(foundry)メーカー。

この二つには、日本古来から続く独特なマーケティングのダイナミズムといいましょうか、醍醐味といいましょうか、面白さがあります。

問屋(卸売)です。

日本には、鎌倉時代から続く問屋がありますので、

・生 産
  ↓
・卸 売
  ↓
・小 売

の流通が確立していて、馴染みがあり、社会へ溶け込んでいます。

かっぱ橋や、築地市場は、観光地にもなっていますよね。


ところが、日本以外には(特に、半導体産業を牽引してきた米国には)問屋が無かったため、流通という切り口ではなく、工場の有る無しでメーカーを切り分けたのかも知れません。

わかりやすく、独りごちてみますと、

「当社は○○メーカー株式会社だけど、工場までも一等地にある必要ないよね」

「当社は○○メーカー株式会社だけど、工場は、別会社にしてもいいよね」

こうして、

・工場あり=ファウンドリ(foundry)メーカー

・工場なし=ファブレス(fabless)メーカー

に分かれたといえば、わかりやすいでしょうか。さらに、


「工場は資産だけど、規模が大きくなると、リストラの対象になって大変よね」

「だったら、企業秘密とか関係ない範囲で、他社に作ってもらってもいいよね」

「国内の他社もアリだけど、台湾とかベトナムとか、海外でもいいよね」

「他社で作ってもらうなら、もはや、当社に工場は要らないよね」

「製造部門の工場がなくなっても、当社の名前は○○メーカー株式会社のまま」

という話を聞いたことはありませんが(笑)、わかりやすさ優先ということで。

一部の日本人にも昔から根強い“問屋不要論”を真に受けてかどうか、その昔、某国のホールセール(BtoB向け量販店)が、

「本国から、卸ヌキで仕入れまっせ。問屋ヌキで売りまっせ。安くなりまっせ」

と、日本上陸し、某業界を震え上がらせたことはありましたが、ふたを開けてみれば、数年以内に、全ホールセールの全店が撤退。


それだけ、日本の問屋(や業界)には、大きな底力がある証拠でした。

今でも確かに、メーカーから商品を仕入れて、小売店へ振り分けるだけの、昔ながらの卸は、(小規模であればあるほど)たくさん存在しますが、

メーカーや、商社の機能を果たしている卸売・問屋も、沢山あり、社会に溶け込んでいます。

たとえば、任天堂やダイドードリンコは、工場を持たないファブレスメーカーですので、

日本でいうところの問屋(卸売・商社)にあたります。伊藤園も、セガサミーも。

シリコンで半導体製品を製造するという意味がファウンドリ(鋳物工場)にはあるため、ファウンドリは、半導体業界に特化したように使われていますが、

ファブレスは、半導体のみならず、昔から、いろいろな業界で使われています。


ファブレスやファウンドリと言わず、OEMやODM、外注や下請けといったほうが、わかりやすいでしょう。昔からあった生産方式です。

化粧品業界が有名ですよね。

じつに98%の化粧品メーカーが、工場なしのファブレスメーカーです。

国内の化粧品メーカーは4,000社といわれますが、そのうち、自社工場で製造から販売まで一貫しているメーカーは、80社(2%)のみ。

その2%のうちの一社が、

「わずか100個から作ります」

なんて、メーカーとしてはありえないロットのバナー広告を出していました。


・なぜに、たった100個?

・なぜに、インターネット広告?(営業活動しなくても売れているハズなのに)

・もしかしたら、レイザーラモンHGの奥様(下記)を増やすつもり?

・だとしたら、モデルや芸能人から直で買える流通ルートを増やすつもり?

・流通を変えることで、化粧品の業界地図も塗り替える戦略?

と、つい(笑)妄想してしまいます。市場が変われば流通も変わりますからね。

極端な話、ファブレスメーカーならば、マンションの一室でも開業できますし、(倉庫は別に必要でしょうけれども)


10年前にブレイクした芸人レイザーラモンHGの奥様が、1億円を稼いだのは事実。

こんな景気のいいことを書くと、また「あおっている」という苦情を頂くかも知れませんが(苦笑)

決して、ファブレスメーカーになるように推奨しているわけではありませんし、

それどころか、製造の現場を知らない企業が、デザイン(意匠)や特許権のみ商品化し、服を汚さずに商売するのは、工業立国の日本を根底から衰弱させるでしょう。


しかし、売上が低迷する中、メーカー機能のない圧倒的多数の企業が、21世紀型かつ知識集約型といわれるファブレスメーカーに活路を見い出す可能性は大!

つまり、第二の任天堂、第三のダイドードリンコを目指す企業が現れる(もう現れては消えているかも知れない)ということです。

そうなったとして(工場のないファブレスメーカーになったとして)調査から商品開発、テストマーケティング、市場導入まで、どう進めましょう?

さて、あなたがメーカーのマーケッターだったら?

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