弱き者その名は顧客[前編]

セールスリード

見込み客のことを英語でプロスペクト(Prospect)というが、マーケティングでは(人によって)リード(Lead)という。

セールスリード(Sales Lead)という人もいる。

明らかに誤りなのだが、社内用語にでもなっているのだろうか?それはそれでよしとしても、Webサイト等で公然と(堂々と?)誤訳するのは如何なものか。

あなたはだけは正しく理解しておこう。

リードには、糸口、手掛かり、その気にさせる、仕向ける…という意味があり、セールスリードは、販売へ至る導線の第一段階や、それに伴う見込み客の情報管理を指す。

わかりやすく一例として、当社が外資系メーカーから請け負っていたセールスリードの実務を一つ挙げよう。


たとえば資料請求。
まず、オファー付きの広告を出稿する。これは広告宣伝部の仕事。たとえば、

「この製品をもっと詳しく知りたい方には、パンフレットをお送りしますので、

・パンフレットの種類(製品Aのパンフ、製品Bのパンフ、製品Cのパンフ、全部)
・お名前
・住所
・電話番号
・年齢
・性別

を(綴じ込みハガキなどに)ご記入の上お送り下さい」

こうして送られてきた申込みハガキ(やデータ)は、広告宣伝部から、営業部や販売促進部へ回される。


営業部や販促部では、申込み内容に従ってパンフレットを封入し、宛名ラベルを貼って、送付する。むろん、入力データは厳重に保管する。

この一連の流れがセールスリードである。

リード・ジェネレーション

上記の例のような資料請求もあれば
・無料サンプル差し上げます(サンプリング)
もあれば
・お試しセットをお試し価格で(トライアルオファー)
もあれば
・試供品の使用感をお聞かせ下さい(モニタリング)
もある。

要するに「その製品に興味があるよ」という見込み客を囲う第一段階のことで、レスポンスを得るマーケティングだからレスポンシブ・マーケティングという人もいれば、まず広告ありきにつきレスポンス広告という人もいる。

呼び方はどうでもいいが、マーケティングの中のプロモーション(広告・広報・販促・営業)が連鎖しているとは、上記の通りである。

このセールスリードを社内で(社員やアルバイトが)賄う会社もあれば、当社のようなマーケティング会社へ外注する会社もある。


パンフレットが数種類で、申し込み件数が少なければ(平たくいえば中小企業のセールスリードなら)社内で充分だが、

・パンフレットが数十種類
あり、
・申し込み件数が月間(各パンフレット)数百以上。合計数千。
となると、
パンフレットや封筒を切らさないよう印刷物(や版下)を管理する必要があるし、それらを保管する場所も必要だし、データを管理するスタッフも要る。


パンフレットのみならず、他にも必ず封入するものとして、
・レター(挨拶状)
・レスポンスシート(申込書)
・アンケート用紙

等があり、毎月数千枚の封筒や、アンケート用紙が費やされていく。

こうして集めた見込み客をリードジェネレーション(Lead Generation)という。


専門用語に惑わされることなかれ。何も難しいことはなく、あなたの身の回りにも溢れかえっている。

再○○製薬所のように
「無料サンプル差し上げます」
と広告を出して、製品に興味のありそうな見込み客をガサーッと集めることといえば分かりやすかろう。

CPR(コスト・パー・レスポンス)の落とし穴

興味のありそうな見込み客をガサーッと集めると、玉石混合する

わかりやすく、再○○製薬所の「無料お試しセット」を例示したいところだが、再○○製薬所の内側でマーケティングに従事したことが無いため、本例もまた当社で請け負っていた実例を挙げよう。

ある飲料メーカー(仮)が、新しい売上を上積みさせる目的で、通販を始めることになった。

上記の2行を読んだだけで、マーケティングや通販に精通した方なら、

「メーカーが通販?矛盾している。何かあるな」

と思われたことだろう。


メーカーが不用意に通販を始めると、最悪、倒産の憂き目に遭う。業界の因循姑息な暗黙知の前で顧客対応が無力なのは、これも遠因といっていい。

件の飲料メーカーにしても、通販のことなどチンプンカンプンだったし、通販に充てる人員が社内にいなかった。

しかし、社長のツルの一声「通販でも何でもいいから売上を伸ばせ!」で通販事業が決まってしまった。同族会社では、よくあることである(笑)

そこで、通販のノウハウを会得するまで、通販部門を、マーケティング会社の当社が代行することになった。

まず、リードジェネレーション。広告を出してリストを集める。

この広告費が、高い。数十万円は少ない方で、数百万円~数千万円は当たり前。


なので、CPR(レスポンス一件あたりの経費)を抑えるために、レスポンス数は多いほうがいいと言われている。

たとえば、100万円の広告で100万件のレスポンスがあれば、CPRは1円。

→広告費100万円で100万件(単価1円)の見込み客リストが出来上がる。

その逆に、100万円の広告で100件のレスポンスがあれば、CPRは1万円。

→広告費100万円で100件(単価1万円)の見込み客リストが出来上がる。

なので、レスポンス数を高めるために、通販広告は実に趣向を凝らしている。


いくつか挙げると、

・ターゲットの目に0.3秒で止まるヘッドラインになっているか?

・ヘッドラインからボディコピーまで、期待が高まる流れになっているか?

・読者が抱えていると思われる問題を充分に解決しているか?

・小学生でも分かるようになっているか?

・テスティモニアルはあるか?

・オーソリティ・エンドースメントや実証データはあるか?

・オファーはあるか?

・スペックよりベネフィットが前面に出ているか?

・「読者の皆さん」ではなく「あなた」になっているか?


ダイレクト・マーケティングはレスポンスがすべてで、広告(DMを含む)は、どんなに美しくてカッコいい広告であっても、レス数が低ければ劣等の烙印が捺される。

反対に、スミ1色で写真なし&乱雑で醜い広告であっても、レス数が高ければ優秀の誉れに浴する。

ところが!

DM業界では常識ともいえる優秀なレスポンス(無料サンプル申し込み)数がじつは大の曲者。

レスポンス数が、多ければ多いほど、良いどころか、無用に多いと、我が首を絞めることになる。

それは、なぜか?

次号へ続く

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