住宅建築やリフォーム営業とかけてサービス業と解く

1/7 ■ 売れる営業と、売れない営業の格差は14倍

マーケティングの最終段階を担う営業職。営業マン如何で、売れるはずの商品が、売れるか、売れないか、決まります。

売れる営業マンと、売れない営業マンの成績格差は、14倍(!)だそうです。

売れない営業が、100万円を売るかたわらで、売れる営業は、1,400万円も売るのですから、一人前ならぬ、十四人前。

これが、3年前の調査では、8倍だったそうです。

わずか3年間で、8倍から、14倍へ急増したということは、それだけ、売れない営業マンが増えたということでしょうか?


人数は変わらない(あるいは、減っている)としたら、今まで売れていた優秀な営業マンさえ、売れなくなったということですから(それはそれで、戦慄の環境変化ですが)

このご時世、就職したくても、

慢性的に人手不足(警備員等)の職種か

慢性的に「優秀な」人手不足の営業職

以外に募集がないため、営業できなくても、営業マンになる人が急増しているのかも知れません。

文系の新卒の70%が営業部へ配属されるほど、企業は、営業マンを欲しがって
いますが、では、

・同じ会社の、

・同じ営業部で、

・同じ商品を売っている

にもかかわらず、どうして、営業マンによって、14倍も差が付くのでしょう?

2/7 ■ 優秀な人材を安月給で採用するのは困難

その理由は、

1)営業スキル(技術/テクニック)もあるでしょう。

2)経験もあるでしょう。

3)もともと備え持った才能、適性、勘、根性もあるでしょう。

4)そうした、営業に向く人材のみ採用できる人事の目もあるでしょう。

5)給料にもよるでしょう。

1~3は、営業マン個人の能力に依存した理由ですが、その「営業力の高い人材」を採用できるかどうかが問題。


売れる営業マンは一割だそうです。どうして、売れない営業が9割を占めるか?というと、

・先天的に営業向きな人材が、多いか少ないかは、営業マンの離職率と、募集の多さをみれば一目瞭然。10人に一人、いるかどうか。

・優秀な営業マンは、既に他社で厚遇されているか、独立しますから、安月給では採用が困難。

・地方であれば、安月給でも、地縁血縁で、採用できるレアケースもありますが、企業ひしめく都市部での採用は不可能。

要するに、売れる営業マンを採用するのは至難のワザです。

次に、4は、神業。

残るは、5の「給料」です。きれいごと抜きに語れば、給料を得るために就職しますからね。

3/7 ■ 教えていますか?営業の方法

5の「安月給だと、優秀な人材が来ない」は、中小企業に共通する悩みです。

そこで、育てるという選択になるわけですが、

-------------------(引用ここから)-------------------

「とりあえず営業に行かせ、一応案件らしいものが出てきたら、そこで初めて上司が同行し提案や契約の仕方などを教える会社がほとんどだ。

だが一番大変なのは案件を取るまでの過程だ。会社としても身につけてほしいのはそのスキルのはずである。

しかしその重要な部分ほどほったらかしであり、教えていない」

-------------------(引用ここまで)-------------------

と「どうやって案件を取ればいいか?教えていない」と看破しています。

教えていないというよりも、

「営業は、足で稼げ」
「断られてからが勝負だ」
「営業マンは自分を磨け」

と、抽象的には教えていますが、

6)具体的に教える内容(営業学)がない

7)20代の新人には理解不可能(なぜ売り上げなければならないのか?等)

ということでしょう。

職人よろしく、営業は、目で見て覚えるものという職人集団であれば、

教える必要がない(という言い訳が成り立ちます)ので、

営業マンは育たず、優秀な営業マンが欲しいという課題は、未解決のまま。

それはそれで、経営者か、営業幹部の判断ですから、とやかく言われる筋合いではありませんが、

経営判断ですので、営業成績が営業マンの責任である以前に、

経営者の責任か、あるいは、教えられない営業幹部の責任であることは、火を見るより明らか。

4/7 ■ 経営者や営業幹部が「売れ!」と命じる理由

では、どうすればいいか?というと、カンタンで、

「売れ!」

と命じないことです。売れ!と命じれば、営業マンは、商品を売る活動に専念します。

「営業マンは、商品を売るのが仕事だろう」

という常識(代表性バイアス)は、何もかも右肩上がりに伸びていた高度経済成長期に、企業戦士と呼ばれた先人たちが生み出し、

その教えを受けた後進たちによって、引き継がれてきた常識ですが、

これまで体験したことのない未曽有のパラダイムシフトが起きつつある今では通用しにくくなってきました。


なぜなら、売り先の母数が減っていますから、

既存客を蔑ろにして、新規客ばかり追い求めていると、

売り先がなくなってしまいます。

なので、大事なのは、既存客。

ビジネスは、カネとコネといわれるように、(資金と)人脈です。

そんなことくらい先刻ご承知なハズなのに、なぜ「売れ!」と命じるのか?といえば、

商品に(経営者の23.8%、営業社員の44.2%が)自信がないか

ライバルと変わらない(差別化できない)商品を売っているため、

「売れ!」

と命じて組織を動かさなければ売れないことを経営者は知っているのでしょう。

人脈を増強するのが営業ではなく、商品を売るのが営業の会社では。

5/7 ■ 売れ!って、いつまでに?

営業活動には七段階あり、

販売は、第六段階に位置します。

第一段階の告知から、第六段階の販売まで、時間の概念は関係しません。

一カ月で販売へ至ることもありますし、五年かかることもあります。

しかしながら「売れ!」という命令の中に、五年後は含まれていませんね?

一年後さえ、鬼が笑います。

ということは、今月や来月の売上のみ追え!ということですから、来年も経営していられるかどうか100%の確証はありません。

事実、事業者数は、30年前(86年)の535万事業者をピークに、マイナス150万もの385万まで減少しました。

ここ30年で、一つの県に相当する、150万人もの社長が、いなくなったわけです。

まだまだ減ります(減少の一途です)


このように、高度経済成長期に生まれた狩猟型営業は、限界に達しています。

生き残っている事業者は(優秀な営業マンにも通じますが)、一年後、五年後を見ています。事業計画というやつです。

このように、営業活動にも長期的な計画が必要です。その計画を、営業戦略といいます。

そこで筆者は、このメルマガで何度も取り上げてきた長期接触営業戦略を唱道しているわけですが、話が逸れますので、ここでは割愛します。

6/7 ■ 商品と、営業活動は、別

BtoBとBtoCの営業では、かなり違いはあるものの、鍋を売っている会社の商品は、鍋ですから、営業マンは鍋を売ろうとしますが、

・同じ会社の、

・同じ営業部で、

・同じ鍋を売っている

にもかかわらず、どうして、営業マンによって、14倍も差が付くのでしょう?

その答えは、商品と、営業活動が、別であること。

鍋を売っているのですから、鍋の商品力で売り上げは決まるように錯覚しがちですが、鍋プラス
             営業活動という無形財

で売り上げは決まります。なので、営業マンの活動によって差が付きます。

鍋は、有形の商品です。

営業活動は、無形の商品です。二つ合わせての売上です。

鍋と、鍋の営業活動は、別ですが、分離できません。


営業活動あるところに鍋があり、鍋があるところに、営業活動があります。

例を変えて解説しましょう。

システムキッチンやトイレは、工務店やリフォーム会社の商品(の一つ)ですから、システムキッチンを売るには、

・チラシがいいか

・訪販がいいか

・ホームページの充実がいいか

営業の戦術論に目が向きがち。どうやって売るか?ですね。

そこで、有形のシステムキッチンと、無形の営業活動を、分けて考ましょう。


戦術論の前に重要なのは、営業マンが有形財(システムキッチン)を売っているのではなく、

工事や信頼といった無形財を売っているという本質論です。注文住宅も然り。

ごく当然な話ですが、打ち合わせ(営業や設計)あってこその工事であり、

工事があってこそ、リフォームや住宅建築が成り立ちます。その、

・工事には、形も、色も、匂いもなく、壊れません = 無形です

・工事は、無形財ですから、在庫できません

・工事は、無形財ですから、製造できません

・どんなマナーで工事するのか、施工前に、体験できません

・システムキッチンと工事は、常に一体で、分離できません。

・工事は、365日、24時間、一定ではなく、天候や季節、大工さん等の体調によって変わります。
機械ではありませんから、同質を保つのは不可能です。

7/7 ■ 営業活動は無形財の商品

同じように、営業も、

・営業活動には、形も、色も、匂いもなく、壊れません = 無形です

・営業活動は、無形財ですから、生産できません

・営業活動は、無形財ですから、在庫できません

・営業活動のみ販売することはできません。商品と一体で、分離できません。

・どのように営業対応するのか?フォローするのか?契約前に体験できません。

・営業活動は、365日24時間、均一ではなく、営業マンの体調や、成長によって変わります。

是この通り、営業活動は、無形です。

無形を売るのは、サービス業です。


サービスですから、売る人(営業マン)によって、差が出ます。

なので、システムキッチン等の建材に対するクレームよりも、

・話が違うといった類いの営業対応や、

・マナーが悪い等の工事に関するクレームのほうが多いわけです。

このように、リフォームは(注文住宅も)、新しいキッチンや、新しい風呂場
や、新しいトイレ等の有形財を売っているように見えて、

じつは、営業にしろ、設計にしろ、工事にしろ、

            プロの仕事ぶりという無形財

を売っています。営業活動そのものが商品です。


シティホテルや、高級旅館も、サービス業ですよね。

建物や備品(有形物)はありますが、評価はサービス(無形財)で決まります。

これを長期接触営業戦略に照らし合わせれば、

        一枚のハガキを送るサービス(心づかい)

を続けるだけで、いつの間にか、結果に差がつくという仕組み。

このように、営業マンは、サービス(営業活動)を売っていることが分かれば、どのように営業すればいいか、自ずから道は開けてくるでしょう。


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