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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2020年1月の記事一覧

千の顔をもつ英雄/ジョーゼフ・キャンベル

地球規模、地球単位での課題に取り組むことが喫緊のこととして求められる現在、ポストヒューマンあるいは非人間という、これまでとは異なるパラダイムで思考をすることが必要だという話を昨年からこのnoteでは繰り返してきた。 その際、従来の人間中心主義的思考を抜け出すためのきっかけとして、現代においては失われてしまった神話の思考を参照することはとても有意義なことだと、このジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』を読んであらためて思った。 人新世の世における、神話の可能性1940年

ボーリンゲン 過去を集める冒険/ウィリアム・マガイアー

あまり言葉にしたことはないけど、実は、ここ1年半くらいのあいだ「研究」というもののあり方に興味を持っている。 特にこれからの社会における「研究の場」ということに。 もちろん「研究」のなかには、科学の分野の研究も含まれているのだけれど、それ以上に僕が気になっているのは、人文学的な研究についてだ。 人間中心主義的な姿勢があらためられつつある社会においてまさに人間について考えてきた人文学=humanismはその方向性の見直しを求められていると思われるからだ。そして、その見直しが行

道化と笏杖/ウィリアム・ウィルフォード

ファクトは実は疑わしい。 いつも疑問視しているカントの物自体をここで持ちだすのもなんだが、物自体に近づくことができないとされる人間が何故ファクトが意味するものを相手にできるのだろう。時間さえ人間の認識力ゆえに存在しているだけの不確かなものだというのに、何故人間である僕らがファクトを扱えると考えるのか。 数値化されたデータを元に何かを理解すること、それがファクトを扱っていることになると考えるなら、あんまりだ。属人的な認識に頼ることを回避するという意味でなら客観的ではあるが、

ドキュマン/ジョルジュ・バタイユ

2020年。新しいディケイドのはじまりの1冊は、大好きなバタイユの『ドキュマン』にした。そして、noteもここから書きはじめることにする。 いや、実は迷って選んでというよりは、あまり考えずに手にとったのが『ドキュマン』だったという方が良い。 しいて言えば、2019年最後に読み終えたアガンベンの本に『ドキュマン』への言及があったからだろう。 というわけで『ドキュマン』だ。 この本は、若きバタイユが1929年と30年の2年間主宰し刊行していた同名の雑誌に彼自身が執筆した文章を