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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2019年12月の記事一覧

2019年に読んだ30冊の本

個人的に、2019年は読書の当たり年だったように思う。 今年はいままでにも増して雑多な感じで、自分自身の興味関心の赴くまま、いろんな分野の本を読んだのだけど、それが良かったみたい。 ジャンルも、書かれた時代も、書かれた文脈もバラバラでも、僕自身の視点によってそうしたバラバラの本たちが大きく4つくらいの塊に縒り合わされて、僕の内に確かな知的感触を与えてくれた。 今回は、その4つの塊ごとに、今年の読書体験を振り返りつつ、読んだ本から30冊(正確には2冊のシリーズものもあるので

開かれ/ジョルジョ・アガンベン

まさかアガンベンの本を2冊続けて読むとは思わなかった。 けれど、1つ前に読んだ『書斎の自画像』という自伝的な1冊を読んだら、 その中で話題に上がった本の1つである、この『開かれ』も読みはじめずにはいられなかった。 すでに買って置いてあったことが理由の1つ。 もう1つの理由は、もう一冊同時に読み進めているウィリアム・ウィルフォードの『道化と笏杖』でテーマに上がる普通の人間とは異なるフール=道化ということと関係して、この本のサブタイトルである「人間と動物」ということについて考

書斎の自画像/ジョルジョ・アガンベン

アガンベンが書くものが好きだ。 なんというか意味が溶解するところ、理性的な人間を超えたところにあるものを見つめる視点に惹かれる。 この本も含めて4冊目になるが、どの本にも心を動かされてきた。 いままで読んだ4冊のうち『スタンツェ』(書評)と『ニンファ』(書評)の2冊は主に芸術に関しての思考を集めたものだ。『事物のしるし』はなんと要約すればいいか、むずかしいが、言うなれば思考の方法論について考察されている。 そして、この『書斎の自画像』は、シンプルに言ってしまえば、アガンベ

ガルガンチュア/フランソワ・ラブレー

ようやくラブレーを読む。 フランソワ・ラブレーの『ガルガンチュア』は、もう何年も前から、いつかは読もうと思っていた、全5巻からなる『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の1巻目だ。 ラブレーとブリューゲルラブレーは、1483年くらいに生まれ、1553年に亡くなったフランス・ルネサンスを代表するユマニスト(人文主義者)であり、医師だ。 『ガルガンチュアとパンタグリュエル』は第2書にあたる『パンタグリュエル』が最初に1532年に書かれた後、第1書である本作が1534年に、その後