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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2019年1月の記事一覧

あなたの体は9割が細菌/アランナ・コリン

ひさしぶりに読んだ科学系の本。 面白いので平日3日で読み終えた。 ひとつ前に読んだティモシー・モートンの『自然なきエコロジー』に「昨日は「外側」であったものが今日には「内側」のものになるだろう」という言葉があったけれど、このアランナ・コリンの『あなたの体は9割が細菌』は文字通り、そのことを考えてしまう一冊。僕らはもはや環境というものを外に見出すだけでは足りず、内なる環境も配慮すべきものであるということを嫌というほど教えてくれる。 なにしろ「あなたの体のうち、ヒトの部分は1

自然なきエコロジー/ティモシー・モートン

"エコロジーは、もしそれが何事かを意味するのだとしたら、自然がないことを意味する" 年末からすこし読み始め、一度中断して、また年明けすこし立って読むのを再開していたティモシー・モートンの『自然なきエコロジー 来たるべき環境哲学に向けて』。 ようやく読み終えたが、この400ページ弱のそれなりの分量の本のなかで、モートンが現代のエコロジー的な思考法や態度の源泉を19世紀のロマン主義の芸術に認めて、その美的な距離感を批判しつつ、最終的に提唱するダークエコロジーの倫理観がものすごく

プロローグ/円城塔

2018年を『エピローグ』で終えたからには、2019年は『プロローグ』ではじめるべきだろう。 円城塔の私小説『プロローグ』。 それは「わたし」についての小説としての私小説。けれど、通常の私小説における私と、この『プロローグ』と名付けられた私小説の「わたし」はどうも違う。私小説においてその小説を書く/語るものが、私/わたしだとしたら、『プロローグ』においても、そのルールは遵守されている。 けれど、小説を語る者が書く者と奇妙なぐらい、イコールであったら、それは常軌を逸しはじめる