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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2018年11月の記事一覧

食人の形而上学/エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ

人類学+ドゥルーズ。 新しい視点をいろいろ与えてくれて、楽しく読めた一冊。とにかく、このタイトルからは想像しにくい、グローバル化と自国主義、ヘイトスピーチやさまざまな炎上の問題など、現代の社会における課題を紐解くのに最適なヒントが詰まった一冊。 面白いポイントがありすぎて、どう紹介してよいか迷うのだが、まあ、とりとめもなく書いてみよう。 ドゥルーズ=ガタリの有名な作品『アンチ・オイディプス』のオマージュとして、『アンチ・ナルシス--マイナー科学としての人類学』と呼ばれる本を

近代の〈物神事実〉崇拝について/ブリュノ・ラトゥール

デザインの領域において、「結果にコミットする」ということの捉え方が変わってきているのではないかと感じる。 「参加型のデザイン」といったアプローチが重視されるように、デザインはもはやデザイナーとクライアント(発注者)の閉じた関係において行われる活動ではなくなり、デザインによって目指すべき結果を享受する人たちの参加も得て進められる活動になっている。 しかし、この変化の捉え方を間違えてはいけない。 この変化は、デザインという活動にデザイナー以外の一般の人も参加、コミットするよう

社会の新たな哲学/マヌエル・デランダ

人間中心の考え方は、ますます社会を良くしようと試みていく上でフィットしづらいものとなっている。 人新世といった言葉が取り沙汰されるように、人間の行為はもはや地質学的時間をも左右するものとはなっているとしても、相変わらず、この世界の有り様は人間だけでない、さまざまな生物や自然環境とともにあるという点でも人間中心主義的な発想が通用しないのは以前と変わらないままだ。人が対象を見ているだけではなく、対象の側も人間を見ている。その中心のない関係が近年ますます明らかになっている。人間は