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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2018年10月の記事一覧

マテリアル・セオリーズ/北野圭介編

物事の捉え方のアップデートが進行中である。そのことは誰もがうすうす気づいていながら、それほどちゃんと言語化できていないことだろう。 かくいう僕もそうだ。普段から文化史的なものに興味をもっているから、現代の変化もわかっているつもりになっていたが、この『マテリアル・セオリーズ』を今週ささっと読んでみて、そのわかっているつもりの浅さを確認できた。 「わかっているつもり」とちゃんと考えてみることのあいだには、あまりに大きな違いがある。これは忘れちゃいけないことだ。 さて、この本は映

探偵小説の室内/柏木博

ひさしぶりに柏木博さんの本を読んだ。『デザインの20世紀』や『モダンデザイン批判』、『20世紀はどのようにデザインされたか』といったあたりを一気に読んだのはもう10年以上前のことかもしれない。「デザインとは何か?」ということを考える上で大いに参考になったことを覚えている。 家政学とアンクル・トムの話がつながって、それがバウハウスとT型フォードの話につながったり、テイラー・システムの職住分離の話につながったりするのを楽しく読んだあたりから、すでに分野横断型で文化史を読むことを当

ドラキュラの遺言/フリードリヒ・キットラー

大事なのは、教えてもらうことではなく、学ぶことだ。 だから、自分がどうやって学ぶのかを自ら身につけないとどうしようもなくなる。自分が何から学びを得られるかを知っているかどうか。 その意味で、今回ここで紹介する、そして、僕のnoteではすでに何度も紹介している、ドイツのメディア評論家フリードリヒ・キットラーの『ドラキュラの遺言』は本当に学びの機会を多く与えてくれる本だった。 普段読んでいる本よりむずかしさを感じたが、その「むずかしさを感じる」こと自体、学びが得られることを

歴史・レトリック・立証/カルロ・ギンズブルグ

あらゆるものがセンシングされ、ログとして残される。誰がいつ何をしたかがあとからいくらでも確認できるようになる、そんな世界に刻一刻と近づいている。 ここでひとつ疑問がわく。 その時代における現代史とはなんなのだろうか?と。いや、その世界が訪れて以降の時代の歴史とはなんなのか?と。 歴史とは、そうしたログがないことによって失われていく過去があるからこそ、成立しているのではないか。 だが、逆にこうも思う。 あらゆるログがありさえすれば、本当に歴史は不要になるのか?と。ただでさえ