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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2018年9月の記事一覧

吸血鬼ドラキュラ/ブラム・ストーカー

変幻自在。神出鬼没。 時と場所を選ばず、自分の思うところへ自由に現われることができるし、どんな姿にもなれる。嵐が呼べる。雷が呼べる。また自分より低いもの、鼠とか、梟、蝙蝠、蛾、狐、狼などを下知することができるし、自分の身体を小さくすることもできるし、時にはパッと消えて、どこへ行ったんだかわからなくなってしまうこともある。 どんな姿にもなれるし、小さくもなればパッと消えてしまうことができる。ようは決まった形がない。曖昧で捉えどころがない。 この三連休に呼んだブラム・ス

完全言語の探求/ウンベルト・エーコ

言語というものは何にも増して思考の道具であるのだから、言語の完全性、普遍性を問うたヨーロッパにおける試みの歴史を辿るこの一冊が自然とヨーロッパ思想史となるのは当然だと感じたのは、500ページを超えるこの大著『完全言語の探求』を5分の3程度読み終えるか終えないくらいだっただろうか? とにかく読んでよかったと思える一冊だった。 「ヨーロッパ史の始まりを確定するのに十分なデータはどこに見いだされるのであろうか」とエーコは問う。「政治や軍事にかんする大事件では十分でないとするならば

殺す・集める・読む/高山宏

高山宏さんの文庫とは珍しい。 この『殺す・集める・読む』以外だと、『近代文化史入門 超英文学講義』くらいしかないのではないか。 その点、ほかの値段が高い単行本形式のものよりは、高山さんの本の初心者でも手に取りやすいのではないかと思う。 「推理小説の粗筋を要約してしまうのは、ある知人の弁によると死にも値すると不粋なのだ」と本書中にあるが、コナン・ドイルやアガサ・クリスティ、そして、江戸川乱歩など、数々の推理小説を扱いながら19世紀後半から20世紀前半にかけての文化史を問う、推