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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2018年8月の記事一覧

中世の秋/ホイジンガ

そもそも人間はそう簡単に自分の外にある対象を自分の中に受けとめることができないのだろう。 いま多くのことを理解しているつもりになっているとしても、それは歴史上多くの人たちが苦労を重ねて理解できるようにしたことを単に、その理解の結果を借用して自分で理解したかのようなつもりになっているだけのことだ。 そうした積み重ねがまだ不十分であったヨーロッパ中世の人々は、いまよりはるかに少ない理解で、世界、社会で起こる様々な出来事を受け止めなくてはならなかったのである。 その前提に立っ

ファウスト/ゲーテ

なぜ、ゲーテなのか? まず、詩人、劇作家、小説家としてドイツを代表する文豪である一方、色彩論や生物形態学、地質学などの分野で自然科学者としても後につながる功績を残し、また、26歳で移ったヴァイマル公国で政務にも関わるようになり、33歳には公国の宰相にもなっている多才なゲーテという人について興味がある。 文学と自然科学、そして、政治という今ならつながることがほとんどありえなさそうな領域横断を一身で体現した、その思考の有り様と、それらがつながることで成されたものが何かということを

白鯨/ハーマン・メルヴィル

台風12号の上陸とともに読みはじめたメルヴィルの『白鯨』3巻を、先日の台風13号の上陸を前に読み終えた。 終わり近くで、エイハブ船長率いる捕鯨船ピークオッド号もまた台風に巻き込まれるのを台風13号の訪れを前にしながら読み進め、3巻合計1200ページ強を12日かけて読み終えたのだった。 鯨に関する百科全書読みはじめたばかりの頃に書いたnote「鯨の語源」でもすでに書いたが、この『白鯨』という小説、所謂「小説」と思って面食らう。小説でもあるが、百科全書的なのだ。 全135章か