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運用型広告のインハウス化は新人マーケターの成長機会になる

こんにちは、田中奏真です。エン・ジャパンでマーケティングの仕事をしています。

Spider Summit Tokyo の「運用型広告のインハウス化」に登壇して、エン・ジャパンの事例を話しました。共有したことを記録しておきます。運用型広告のインハウス化を検討している方の参考になれば嬉しいです。

専門性を強化したくてインハウスマーケを開始

私が初めてインハウス化に挑戦したのは、2017年7月。Google Marketing Next 2017 で聞いた「広告が機械学習で進化し、マーケター全員がAIを活用できるようになる話」が面白かったので、実験的に取り組みました。

その後、インハウスマーケティング体制は今年で 7年目を迎え、新卒入社や社内異動で配属された新人マーケターに運用型広告の業務を任せています。インハウス化の実績がある広告は、Google、YouTube、Yahoo!、Facebook、Instagram、Twitter、Apple、TikTok、Moloco です。

インハウス化の目的は、マーケターの専門性を強化すること。当時の私には機械学習やAIの知識が全くなかったので、ちょうどよかった。

最初のインハウス化に選んだのは、Google 広告でした。インハウス運用の知識は、Google 広告の認定資格の学習プログラムで十分でした。認定資格をチームメンバー全員が受検したことで、共通の言語を持てるようになり、社内コミュニケーションもスムーズに。

Yahoo!の検索広告を一緒に取り組まなかった理由は、広告の仕様や広告管理画面が異なったためです。1時間に2媒体の広告管理画面を操作するよりも、1つに集中するほうが結果的に2倍以上の成果があると判断しました。

徹底したのは前日に発生した問題を翌日に改善すること

マーケティング支援会社の運用結果と同じになったのは、準備を開始してから 3ヶ月目です。当初の目標は 2ヶ月でしたが、甘くなかったです。

初月は Google のヘルプページや書籍を参考にしながら、広告管理画面のアカウント発行や広告入稿を行いました。広告配信に必要な対応とは別に、請求書のような事務手続きも多くあり、地味で手間のかかる作業が想定以上にありました。

翌月になってやっと広告運用を開始しましたが、多くの失敗が発生。例えば、1日の上限予算設定を誤って広告費を過度に使ってしまう。入札単価を高く設定せずにコンバージョンデータを蓄積できない。媒体タグの設定にミスがあって効果が適切に計測されない。競合他社が夜中や土日に入札を行う際に適切に対応できない。思いつきで広告のテキストやLPを編集して仮説検証ができない。論理的なレポート資料を作成できない。担当者の夏休みや体調不良の際にはチームのリソースに余裕がなくなる。他にも課題は山積み。

そんな中でも、「前日に発生した問題を翌日に改善すること」だけはチームで継続しました。多くの失敗をしても改善案を見つけて仕組化すれば失敗確率は下がる。そうしてなんとか日々の広告運用を継続していると、機械学習に利用する教師データがたまり、広告効果が指数関数的に向上。インハウスの準備を開始してから 3ヶ月目には、マーケティング支援会社と同額の広告費を使ったときと同じ成果が出るようになりました。

新人マーケターの専門性が大幅に向上

運用型広告をインハウス化してよかったのは、新人マーケターの専門性が大幅に向上したこと。運用型広告の仕事は、自身の介在価値を実感しやすいプロジェクトです。考えた施策の結果をすべて数値で評価することが可能。月間の広告出稿額が1億円の場合、広告効果を10%改善するだけで1,000万円の利益が得られます。マーケターの成長機会として非常に有用でした。

広告クリエイティブの内製化も進みました。検索広告に続いてインハウス化したのは Instagram 広告です。Instagram が大好きな新人マーケターにクリエイティブ制作を任せたことで、Instagram の世界観に合った広告を創ることができ、広告効果が劇的に改善されました。それからは毎年、新人マーケターに Adobe Creative Cloud を標準装備してもらい、広告クリエイティブの内製化も積極的に進めています。

データ分析力も向上しました。マーケターがSQLを用いて必要なデータを取得し、Tableauで可視化し、問題の分析や意思決定を行う。クリエイティブごとの広告データを分析して、新しいクリエイティブの制作と配信を当日中に実行。機械学習に利用するデータを集めやすくなりました。

マーケターのスキルが向上して広告効果が上がると、広告費に余裕が生まれます。新しい広告を試したり、新しいマーケティングツールを導入したり、顧客理解を深めるためのプロジェクトを増やしたり、副次的な効果も発生しました。インハウス化は最初はとても大変ですが、リターンは大きいです。事業会社でインハウス化を検討しているなら、一度は試してみることをオススメします。

ちなみに、エン・ジャパンでは運用型広告すべてをインハウス化しているわけではありません。当社が運営しているプロダクトは複数あるため、プロダクトの課題に応じて、マーケティング支援会社の方々に伴走いただいています。インハウス運用とマーケティング支援会社の運用それぞれにメリットがありますので、今回の事例は参考程度にお願いします。

インハウスマーケティングに求められるスキルを言語化した

最後に、Instagram 広告を担当する社員のスキルアップを促進するために言語化したものを共有します。必要なスキルは、5つのレベルで整理しています。

Lv.1)デザインの基礎知識を持っている
Lv.2)サービスに応じたペルソナを定義できる
Lv.3)ビジュアルデザインのアウトプットができる
Lv.4)IA(情報アーキテクチャ)を用いたデザインのアウトプットができる
Lv.5)ビジネスゴールとユーザー体験を両立させるデザインのアウトプットができる

新人マーケターは、レベル 1の「デザインの基礎知識を持っている」状態からスタートします。その後、サービスに応じたペルソナ設計を経験し、バナー広告や動画広告、ランディングページなどを自らデザインして、ユーザー体験の向上を目指します。レベルアップの目安となるスキルや知識は、以下を選定しました。

新人が自己採点で作ったスキルチャートと、先輩や同僚に評価してもらったスキルチャートを並べて比較すると、認識のギャップも発見できます。共通言語でコミュニケーションできるツールがあると便利です。

今後インハウス化で注力するのはMoloco

Moloco のインハウス化については、後日詳細に書いてみようと思います。下記は、Moloco のイベントレポートです。Moloco に興味がある方はぜひ読んでみてください。


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