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マカロン・ラプソディー ②つるっとまあるく仕上げる

 マカロンの本体が焼けた。わりに上手く焼けた。詳細なレシピの通りに作ったおかげなので、レシピ様ありがとう。そして、オーブンレンジが設定温度通り動いてくれたおかげだと思う。ありがとう。
 それくらい、目の前にゴロゴロするマカロンの山は壮観で、マカロンをお腹いっぱい食べたい欲は満たされてしま…ったわけではない。
 いろんな色、フレーバーがマカロンの醍醐味ではありませんか。あれを体験しないでは、「マカロン作りました」とは言えない気がする。
 だから、いろんなフレーバーに挑戦せねばならない。チョコ、抹茶、レモン、いちご、紅茶。

 ネットで調べると、抹茶とチョコ以外のマカロンの色はたいてい食紅でつけるものらしい。 色は食紅だ。黄色とか赤とか。蓋をとると、真っ赤な粉。これを添付の小さなスプーン…というか、耳かきのような道具で掬い取り、メレンゲとアーモンドプードルを混ぜるときに一緒に入れる。入れすぎたかな、と思っても、焼くと色が落ち着くので「えっ」と思うような濃さでもオッケー。
 また、チョコならココア、抹茶なら製菓用の抹茶パウダー、紅茶なら製菓用のアールグレイパウダーを指定量混ぜる。こんな少なくてええのん?と思うがええのである。過ぎたるは及ばざるが如し。
 ゴムベラでそれらを馴染ませつつ、メレンゲの泡を調節して生地が「途切れずリボンのように垂れ落ちる」ところまでもって行く。マカロナージュと呼ばれる作業だ。これが足りないと、生地の中に空気が残りすぎてマカロンが膨れすぎたり割れたりする。逆に不足すると、ペタンとした焼き上がりになり、縁のフリル状の「ピエ」がなくなる。加減が難しいのである。大体、「おっしゃええ感じやで」と思って搾り袋に移す作業、後半になると勿体無いから生地をかき集める、かきかきするうちに生地がだれる、構わずそれを絞り袋にインしてしかも、絞りの終盤でも「もったいない」と袋をしごいてまた泡をつぶす…

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 やり直しは効かない一発勝負なので、練り練りしながら自己との対話のようになっている。「前回はやりすぎてだれちゃったよね、今回は程々にしようか」「ひびが割れたのは温度のせいだったのか乾燥不足だったのか練りが足りなかったのか」当時のわたしの「ほぼ日手帳」は試行錯誤の跡が残り、実験ノートの如しであった。

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 「綺麗にまぁるく、さっくり膨らませる」は実はマカロン作りの最大の山場でポイントで天王山、マカロナージュ以外にも関門は多い。特にいちご味を目指した場合、いちごの味を欲張るあまり生地を重たく膨らみにくくしてしまった…ことに気づいたのは5回目くらい。失敗作(ネチっとしていて、食感がとてもよくない)(しかしいちご味は濃く、甘味もしっかりしていて捨てるには惜しい)を悲しく胃に収めること数回のち、「いちごらしさは挟むクリームで実現しよう」に落ち着く。

 そして乾かす。普通のお菓子作りなら乾燥は大敵だし、乾く間にテキパキオーブンに運ぶべしなのだけど、マカロンは乾かす。表面がゴムの膜を張ったようになり、触っても指に生地がつかなくなるまで乾かす。乾かす事で、焼いたとき表面が卵の殻のように滑らかに持ち上がり、表面から逃げられない空気や水蒸気が縁のところからブツブツと逃げて…あのかわいいフリルのような模様になる仕組み。意外と夏は乾かない。クーラーをかけ、扇風機で風を送り、満遍なく乾くように時々天板を回転させて、やっとムラなく乾燥ができる。日本の夏はマカロンに不向きなのだ。

 テッペンがひび割れず、綺麗に持ち上がり、かわいいカーブをツルッと焼き上げることができるようにはなった。しかし、一口齧ると悲しい事実にぶち当たるようになった。次は「空洞」のお話を。

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