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神様の罠・・・読みました

「罠」ですか・・・・しかも神様が仕掛ける罠。もしかして神様のための罠?神様が居ると思うことが罠?

本は大抵は最初から読む。アンソロジーは最初から読まずに気に入った題名から読んで、何度も読み返すという失敗した経験があり、今回は最初の『夫の余命:乾くるみ作』から読み始めた。「余命」という題名らしく、時間を遡って話が進む。なんか変?と違和感を感じる頃にはすでにやられました!これはミステリーだったのに、すっかり騙された。その謎が解けてやっと腑に落ちる。ザワザワした気持ちに蹴りが着く。気持ちの整理に時間がかかったがその余韻に浸る時間も楽しかった。

さて次作品は『崖の下:米澤穂信』初めて読む作家。ストーリーも設定もあり得ない。私の頭では理解不能。文章は読みやすいし、言葉もわかる。すんなり読めるのだが、心が追いつかない。自分の頭の理解する部分をシャットアウトしてしまった。これこそ仕掛けられた「罠」にはまったようだ。

『投了図:芹沢央作』このところの将棋ブームから、投了が「片方が負けを認めること」ぐらいの知識はあった。だからなんとなくではあるが最後の姿は想像できた。しかしその動機は虚しい。解りたくない。主人公である犯人の妻と気持ちが重なって、心が沈んで行く。寝る前のベッドで読んでしまったので、やり切れない気持ちから現実の自分に戻るまで、朝までかかった。

「孤独な容疑者:大山誠一郎作』事件を起こす者も事件に巻き込まれる者も、情に流されやすいダメ人間だったり、人間とは思えないクズだったりすると思っている。自分を棚に上げて覚悟して言うのだけれど、目に見えて自分とは違う種類の人間だと思ってる。しかしこの作家、大山誠一郎のミステリーは、身近にいる普通の生活をしている人がマジシャンのように大胆なことをする。「孤独な容疑者」はわかりやすい嫌味な人間が殺されるのでわかりやすい。犯人もわかりやすいはずだった。安心していると、途中で異変に気づく。頭の中を整理して考える。そういうことができるミステリー。私の回らない頭脳でもなんとかなる範疇で楽しめた。読後スッキリ。

『推理研VSパズル研:有栖川有栖作』また、眠る前のベッドで読み始めてしまった。頭が眠る方へシフトしてしまい、途中でチンプンカンプンになった。そして日を改めて美容室で読む。カラーリングして待つ時間に本を開き、美容師さんに「お客様、シャンプー台へ・・・・・」と声をかけられるまで、夢中で読んだ。無意味な議論だけど、無意味な推論だけど、面白かったことは確か。シャンプーをしていただいているその時も、頭の中は「青い目」のことで一杯だったから。

『2020年のロマンス詐欺:辻村深月作』この作家も初めて読む。気が抜けないハラハラするストーリー。だが、読み進むとだんだん題名に近づいてくる。きっとそうであるに違いない方向へ進んで来る。コロナ禍の気持ちの隙間に入り込む心の揺れを背景にしているが、コロナ禍ではなくても今までもこれからもきっとずっと続く永遠の詐欺。人間の心は脆くも危うい。でもほんの少しの絆が安心も与えてくれる。最後は日常の何気ない生活に戻ったようだった。

神様は、お試しになる。そして私たちの謝罪と感謝の気持ちを受け入れてくれる。人間が感謝を忘れた時に、自らの罠に落ちる。読後はそう思った。

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