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アルプススタンドで変なダンスを踊るキミへ

※2020年夏@シンガポール某所



高校野球の季節だ。 

シンガポールは常夏だが

そういうことにして頂きたい。

高校野球の季節たらしめてるのは 

大人の都合なんだなと 

コロナ禍でしみじみ思うけど 

ちらちらっとネット中継を見た。 



毎年この時期に

古傷みたく涙腺が緩むことがある。 



























スクロールダウンありがとう。 

近々ホームランバーの当たりが 

あなたに出ますように。



スタンドで踊る

まっさらなユニホームの補欠君。

カメラに映るたびに涙腺が緩む。 



何を隠そう、少年野球の3年間で 

6年生時に僕は

消極的プレーと問題態度で

監督に1年間干され続けた。

母をしんみりさせてしまった。

(気丈に振る舞っていたけど)



毎週弁当を作り、車を出して

チームの為に雑務をこなして

背番号1桁なのに試合に出ない息子を

眺めるのはさぞキツかっただろう。



補欠の先輩として僕は毎年思う。

野球人口減ったらいいなあと。

要するに、補欠君が減ってほしいと。 

補欠大国日本を嘆いてます!

とか言うと、 

海外に住んでる奴が

事情も知らないくせに!と

石投げられそうだが、時を戻す。



6年生になったばかりの4月

補欠で野球人生終わることを悟った。 

今思えば補欠のセンスがあった。

僕と技術が同レベルだったり 

僕より技術がちょい下だけど 

監督の前だけしゃかりきな演技が 

めっちゃうまい 5年生がちらほら。

んで、監督は 

ガッツの足りない奴はこうなる

という見せしめで僕をレギュラーから 

外し続けた。

レギュラーを取り返すかどうか 

一応は脳内で審議した。 


出した答えは 

[ガッツを出さずに終えてみよう] 

だった。 わりとすぐに答えが出た。

好きでもない監督に媚びて

試合に出て野球上手くなる 

その必要が自分にはない と。 

1年間補欠に耐えたら

良心の呵責に耐え切れず

監督も謝るんじゃないか と。 




結果、 

僕の母が惨めな思いをしただけ 

だったんたけども。 



下手な部類でなかったから 

中学で野球部に誘われた。 

チームメートに2週間くらい。 

けど断り続けた。 

[肩壊しやすいからさ]って。 

補足すると、 

補欠が肩を壊す確率はゼロに近い。 

だって投げ込む需要ないから。 

壊すわけがない。





ユニホームが綺麗なまんま帰ってくる 

補欠君が 

中学で野球を続けるかどうかなんて 

元チームメイト3人以外には 

どうでもよすぎて 

笑い転げてしまうくらい 

とるに足らないことだ。 

だけど僕にとっては大きな決断。 

禊みたいな2週間だった。 

そして野球部の補欠君は

陸上部で期待の新人を目指した
(長距離走が得意だったから)


とはいえ、

[仲間に悪いから野球続けようかな?] 

[中学で試合に出たら母喜ぶかな?] 

[活躍したらモテるのかなあ?] 

そんなことをモヤモヤ考えた。 

モヤモヤを流す禊。




まあ、結局その後女子陸上部の

一個上の先輩に

モヤモヤすることになるんだけど。



さて、

高校野球のスタンドに目を移そう。 

よーーく、見てほしい。 

変な踊りを一生懸命踊ってる 

補欠君の目を。 

あれに 

美しいドラマを見出し 

涙する人がいるという。 

やめてあげてくれ、 

美談にしないで。公開処刑だ。 

僕は、なかなか直視できないわ。 




即席で作ったチアリーディングの隣で 

男1人ぶすっとしているのは 

カッコ悪すぎるという空気圧。

はっちゃけて頑張ってパフォーマンス 

けどなんだかぎこちない 

あのヘンテコな踊り。 

最前列に陣取る、 

クラスで1番可愛い子が映る。 

ところでお前は何故涙し 

何を祈っておるのだ。 

ところでお前は

割と顔が整っていて

シュッとしたエースに 

即席感情移入してるだけだろが。

家で、鏡の前で、練習してきたよな 

まずあの祈りのポーズやめろ。 



何が嬉しくて 

即席応援団の隣で 

母校が誇らしく応援するOB達 

そして選手全員の保護者の前で 

高校3年間の集大成として 

全国ネットで、ヘンテコな踊りを 

一生懸命踊らなきゃいけないのか。  

理不尽に感じる補欠君だっている。



これをツッコむと必ず 

補欠君を馬鹿にするな! 

社会で役に立つんだ! 

と、お叫きになられる。





一度でも補欠君に選択肢を与えたか? 

辞めても構わない空気を 

退部は逃げじゃない

それは必ずしも脱落ではないという

優しい空気を

誰か1人でも醸成したか? 

レギュラーになることだけが 

補欠の卒業ではない。 

退部しても補欠卒業できる。




戦争を続ける圧と同じじゃないか。 

大敗するのがわかってるのに。 

惨めな思いが待ってるのに。 

選ばせてあげてくれよ。 

向いてないと悟り

新たな道に進む補欠君を

見守ってあげてくれよ。

有限な青春時代だからこそ 

せめて無限の選択肢を 

感じれる学校生活であってほしい。 





圧倒的無力感。

スパイクの代わりに 

見栄えの悪いダサい運動靴履いて 

競技生活の終戦を見届ける為に 

立ち振る舞う。



気持ちを切り替えて 

ダンスを頑張ってるんじゃない 

頑張って終わったことにしたい 

悲痛なラストダンス。



補欠生活が 

人生の糧にはなるかもしれない。 

けど、 

役に立つことは多分ない。 

僕はそう思って生きてる。




補欠がそんなに尊いかい? 

意味を見出さなきゃ非国民かい?

見方を変えたら

僕ら一般市民は政治家の補欠だ。 

レギュラーを張れることのが少ない。 

若くして補欠を学ぶ必要がない。 

慌てなくとも

補欠なことは沢山待ってるから。



どんなことでもいい。 

キミはレギュラーを張ってくれ。 

ヘンテコダンスのレギュラー? 

それも悪くはなかろうが 

どうせなら 

バットをギターの棹に 

持ち替える方が 

わりとすんなりいくんじゃないか。 

太さも似てるっちゃあ似てる。 

キミがバンドを組む限りは 

キミは必ず 

レギュラーメンバーだし。 

バントでランナーを送るより 

バンドでグルーヴを送り届けろ。

尚、弾き語りなら万年レギュラーだ。 

誰が聴くかは知らんが。



応援なんて 

応援したいやつに任せろ。 

そして 

キミはキミを応援しろ。 







キミは誰だ? 

おやまた、

アルプススタンド最前列の女の子は 

シュッとしたエース君に 

即席感情移入で祈りを届ける。

しつこいねえ、、ったく。


アルプススタンドに

辿り着くことさえできない僕は 

ダンスを踊るキミに

即席感情移入で涙を流す。




ウザさなら、妄想力なら

最前列の女の子と五分五分 

延長タイブレーク、望むところ。 

負けへんよ。

ブリッコ女は全部打ち返すよ。

勝手にブス扱いされて

アルプススタンド後方に

押しやられてしまったチアの子の

行き場の方ない諦観は

全部受け止めてあげたい。


ん? 

大会規定により打ち切り? 

納得いかん。 

リ、リプレー検証っ!

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