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野良猫たるもの

夜明け前にジョギングに出る。コースはいつも同じだ。東の空がいつも視界に入る農道をジョギングのコースにしている。車が真横を走ることはなく、心地よくリラックスして走ることができるお気に入りの道だ。

アスファルトで舗装された農道に入って数メートル、農道端の草に野良猫が丸くなって寝ていた。身を隠す壁もなければ、朝露を凌ぐ天井もない無防備で寒々しい場所で、野良猫たるものが寝ていた。

1メートルとない至近距離でその野良猫に気づき足が思わず止まった。その野良猫は白地に茶トラ色の大きな丸い模様がいくつかあり、白地の毛は全体的に薄汚れていていた。猫は眠たそうな目でオレを見上げはしたが、逃げる様子どころか警戒すらせずそこにいた。

何か病気なのか、怪我でもしているのかと少し観察したが、そんな感じでもなさそうだった。一瞬写真を撮るか迷ったが邪魔をしては申し訳にのでジョギングを再開してその場を走り去った。

その後も夜明け前のジョギングで2度その野良猫に会った。2度とも農道から見下ろせる田んぼで丸くなっていた。周りからは丸見えである。危険ではないのか?それに湿った土で冷えないのだろうかと心配になる。

その野良猫と会うたびに目が合うが、野良猫特有の警戒心はなく、あきらめのようなものを感じる。

「わしに興味をしめすな。あっちに行け。わしは意外に心地いい」と、農道から眺めているオレに言っているような気がした。

その野良猫の目が、存在が脳裏から離れない。どこでも生きられるし、いつでも死ねるというそのあきらめにも似た達観した目が、力強くもあるし弱々しくもある。

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