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自動化された身体の動きの完全さに憧れ、思考もそうであって欲しいと願う。

多くの人がまだ寝静まっている朝4時半に起きる。不思議とアラームのメロディが最初の音から聞こえている。まるでアラームが鳴る前から起きているかのように。
3秒後には布団から出て、這ってテーブルの上にあるスマホを手に取りアラームを止める。

眠たいという思考が出てきても0.01秒で無視する。「眠たい…」と感じる時間を与えない。だから「もう少し寝ていたい」と一切迷わない。少しでも考えると誘惑に負ける可能性が格段に大きくなる。

思考停止。全自動。自分を単純な作業をする機械と化す。

南向きの掃き出し窓は雨戸が閉められている。東側の4枚組の中連の窓からは、薄らと夜が明けはじめた空が見える。豆球を点けるが、部屋はまだ足元が見えないくらいに暗い。

そんな中でもわかるように前日からお皿に用意しているサプリを、これも前日から用意している水筒に入った水で流し込む。そしてスワイショウのようなラジオ体操のような動きの体操を5分くらいし、そのまま上に薄いジャンパーを着て、灯りを点けないままの玄関で前日に用意している靴を履き、必要最小限だけ玄関の引き戸を静かに開け外に出る。

はじめに身体に飛び込んでくるのは、肌を通しての気温と湿度だ。朝はだいたい冷んやりしている。このとき何かのスイッチが入る。そして世界と鮮明につながる。

家の敷地から道路に向かう。足が自動的に動く。靴底のとても薄いシューズを履いているので、足裏で地面の凸凹を細かく感じることができる。

オレの足は一定のリズムで交互に踏み出し、地面をキャッチし後ろに蹴り出す。身体は絶妙なバランスをとる。
少しだけ上体を前傾に傾けることを意識する。すると足は倒れまいとして片足を前に踏み出す。するとほどよいスピードでスロージョギングがはじまる。

肺は意識しなくてもちゃんと空気を吸っては吐き出してくれる。
心臓はちょうど良い脈拍で酸素とエネルギーを筋肉に運んでくれる。

オレは「タモツ」という肉体に乗っている。
完璧なプログラムで作動するこの肉体に憧れる。

それに比べて思考や感情は邪魔に感じてしまう。
思考は、いまでない別の時間や空間にオレを連れていく。
感情は、静寂を打ち壊す。

それが人間なのかもしれないが、それが不快でしょうがない。

いつもの農道の散歩コースを走る。
アオサギがオレから逃げるように水路から飛び立つ。
薄暗い空に浮かぶアオサギのその完璧な飛行に目が釘付けになる。

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