オレの中で起こっている様々な現象を全部バラバラの生きものとして捉えたら
動物たちの行動はとてもシンプルで理にかなっているように感じる。カラスやカナヘビ、蝶々やダンゴムシ。
それに比べて人間は複雑だ。というか面倒だ。素直ではない。
脳が発達し過ぎたせいで、高度な思考が生まれ、言葉がつくられ、時間がつくられ、意味がつくられ、意志がつくられ、責任がつくられ、恥がつくられ、いろんなものがつくられてきた。
しかし、動物も人間も同じ生きもので、目的は一緒のはずだ。それはできるだけ死なずに生き延びること。そのために痛い目にあわないようにすることだ。
そもそも肉体的に痛い目にあわないために、精神の一部は生まれたと思うんだけど、今では精神が痛い目にあわないことが肉体よりも優先されているように思う。そして脳の発達と共に精神はややこしくなっていった。
だから複雑になり過ぎた人間のいろいろなものを一度バラバラにして一つひとつが個別の生きものとして見てみると何か面白そうだと思った。
まずは人間を大きく分けてみる。
思考という生きもの。感情という生きもの。衝動という生きもの。意志という生きもの。意識という生きもの。無意識という生きもの。
動物的本能という生きもの。人間という性質の生きもの。先祖代々受け継がれてきた遺伝子の特性を持つ生きもの。生まれてからこれまでの記憶からできた習性を持つ生きもの。
それらのものが複雑に絡み合って生まれたその瞬間の反応の生きもの。それと同時に生まれたそれとはまた違う反応を示す生きものが多数ある。間違いなくもっとあると思うけど、これくらいにしておく。
これらの無数の生きものがひとつの人間の身体という一軒のアパートに共同生活をしている。管理人はオレだ。しかし管理人は見てるだけ、観察するだけしかできない。何かを判断し、行動するのはアパートの住人だ。
外で何かがあると、アパートの住人たちは部屋のドアを開けて外に飛び出していく。そして何かを言ったり、やったり、感じたり、考えたり、判断したりして騒ぎ出す。
無意識はアパートの地下室にこもり外には出てこない。しかし全ての住人の電話番号もメールアドレスも知っていていつも連絡を密にとっている。すべての情報は地下室に集まる。
管理人ですら地下室に入ることはできない。無意識は影の支配者だ。
管理人であるオレはアパートの窓を開け外を見下ろす。そこからはアパートの住人がなにをやっているのか、なにを言っているのか、なにを考えているのかがよくわかる。そしてよくアパートの住人同士がケンカをする。しょっちゅうする。どこかの部屋からは子どもの泣き声も聞こえてくる。とても騒々しい。
しかしオレは彼らになにを言うでもなく眺めている。まれにアパートに火をつける住人もいるのが、それも賑やかでよろしいと思う。
人間は脳を発達させてアパートの部屋を増築しつづけ、住人を増やしつづけた。
建築法違反もクソもない。迷路だ。神秘だ。ガウディだ。
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