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デートをかさねて

1度目のデートが上手くいくと、次のデートが怖くなってしまう。1度目までは私でも上手くやれる。ZOZOでランキング入りしているワンピースを買って、アクセサリーショップで売っている1000円もしない金メッキのピアスをつけて、5センチくらいのヒールを履いておけばいい。過去の恋愛について聞かれても、くわしく話す必要はない。会計時には財布を出すフリをしておく。
でも2回目のデートには、私はスニーカーを履いていきたい。3回目のデートには、Tシャツにデニムで出かけたい。4回目のデートには、手ぶらで出かけたい。首にヘッドフォンを引っ掛けて。財布はポケットに入れるから。5回目のデートには、ショートヘアで。6回目のデートには、キャップを前後逆に被って。

でも、2回目のデートにも私はスカートを選ぶ。家族について聞かれても、「父親とも母親ともあまり口を聞かない」とは言わない。得意料理を聞かれても「クックパッドを見れば誰でも作れますよ」とは言わず、「好きな食べ物はなんですか」と聞く。「いい奥さんになりそうなのに」と言われると、はにかみはするが「私はいい旦那さんにもなれますよ」と心の中で思っている。駅前で「うちに泊まってけばいいじゃん」と言われたとしても、猫がいるのでと頭を下げる。この頃にはもうなにもかもが嫌になっている。

自宅に戻るとさっさとTシャツと短パンに着替える。オールフリーと堅あげポテトがめちゃくちゃ美味い。ソファにすっころんで、浮腫んだ脚を壁に立てかける。そうして横目でテレビを覗くと、猫が私に頬ずりをする。そのときに、“私はこのために生きているんだ”と思う。

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