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おいしさは、分け合うことで進化したのかもしれない。

コロッケは手間がかかる料理だ。手間を知っているからこそ、感じるおいしさもある。

ふと、人間以外の動物は食べ物を味わうのだろうか。と思った。生物は、おいしい、だからもっと食べたい。そう思うことによって、生存しやすくなるようにプログラムされているが、もし同じ味の食べものを食べたときに、そこに違いを感じるようにできているのだろうか。

例えば、まったく同じ味のフライドチキンA・Bがあったとする。Aは近所の汚いおんちゃんがつくったもので、Bはカーネルサンダースがつくったものだと聞く。となれば、100%Bを味がおいしいと感じると思う。何ならBの方が少しおいしくなくてもBをおいしいと感じるだろう。さらに、カーネルサンダースが目の前にいたのなら、これがケンタッキーの本当の味なのかと錯覚し、おいしさは何倍にも倍増し感動すら覚えるかもしれない。

つまり、何が言いたいのかというと、人間は食べ物の味だけでなく、様々な要因から食べ物のおいしさを決定しているということだ。

そして、僕が常々疑問に思っているのは、何が人間をこうさせたのかだ。おいしいと感じることに対して、様々な情報を用いて判断している。その理由は何なのか。そしてそこに、人間とほかの動物に差がみられるのなら、その違いは何なのかという点だ。

今回は熊井ひろ美さんが訳した『おいしい進化』ジョナサン・シルバータウン著 をもとにこの疑問を迫っていきたい。

オキシトシンの誘惑

オキシトシンとは愛着ホルモンとも呼ばれるホルモンである。オキシトシンが高まると、ストレスや食欲の軽減にもつながるが、人と人との愛情や信頼感を生むこともできる。オキシトシンの分泌は触れ合うことで促される。その濃度は、親密度によっても変化し、親密になればなるほどその分泌量は増加し、愛着やストレスの軽減(癒し)につながる。

そして、同書には、”哺乳類ではハタネズミからヒトに至るまで、オキシトシンというホルモンが攻撃性を弱めて、母子間や性的パートナーどうしの社会的な絆を形成する役割を果たしている。”とある。

オキシトシンは人と人とのつながりを作る上で信頼関係とはまた違った、絆を作ってくれる。

さらに、興味深いことにチンパンジーでの実験で、食べ物を分け合ったときに、与えた側と、受け取った側、両者のオキシトシンの濃度が上昇していたとある。面白いなと思ったのが、与える側にもメリットを作っているという点である。

心で感じるおいしさ

家族や友人、恋人など、自分の親しい人と食事をしたとき、一人で食べるときよりも食事がおいしく感じるのはオキシトシンが関係していると仮定する。

オキシトシンは「人と人とのつながりを感じたときに出る」と考えると、おいしさの一つの要因が「人と人とのつながり」だと考えることができる。そして、つながりを解釈することによって、料理をよりおいしくすることができるのではないか。

例えば、実家で取れたみかん。おばあちゃんが畑で作ったにんじん。調理員さんが苦労して作ったコロッケ。食べ物に様々なつながりを知ることで、オキシトシン濃度があがり、料理をおいしく感じることができるのではないか。

いわゆる「心の栄養」になるものは、つながりが深く関係し、それを作り出し認知させることによって、調理がさらにおいしく感じ、心ももっと豊かになり給食の時間が楽しいと思えるという好循環が生まれる。

これから

僕ができることは、食べ物のと社会との人とのつながりを子どもたちに気付かせていくことだ。給食巡回の時や、掲示物、放送原稿、おたよりなどを活用する。これからは、栄養素や料理のことだけでなく、人を中心としたつながりについて語り、知らせる機会を作っていきたい。

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