涙を流すひと

【詩】

 

最終間際の列車の中で

酒に飲まれた人びとの中で

ひとりさめざめと涙を流すひと

声も出さずに中空の一点見つめ

そこに無くしたものが在るように

手の届かないものが在るように

それを見つめてひとり涙を流すひと

誰も声をかけることはない

僕も声をかけることはない

誰かに声をかけられることなく

最終間際の列車の中で 

ひとりさめざめと涙を流すひと

 

tamito

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#詩

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