昼下がり

【詩】

波間から見る砂浜ひかりに満ち

パラソル縫い素足で歩くきみの

不確かな後ろ姿眺める昼下がり

「きみの人生の何分の一?」と

不満そうに突然きみが訊くから

雲がながれて太陽をさえぎった

サイダーのビンに浮いたしずく

指で拭いながら見ているきみの

瞳に映る水平線の先にある国々

どこへでも行けるはずのきみの

どこへも行けないと語る目の色

ぼくができることは生きること

わずか短い夏にわずか短い命を

懸命に鳴く蝉に似て季節はゆき

時は無自覚のままに過ぎてゆく

きみが問う「何分の一」に今は

まだ答えられないけれど精一杯

精一杯の時間を共有すると誓う

きみは穏やかに笑い30年後の夏

やけた砂浜の昼下がりを夢みる

沖をゆく貨物船が汽笛を鳴らす

tamito

作品一覧

#詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?