つり革の町に立ち

【詩】

 

本を読んだって
音楽を聴いたって
酒を飲んだって
どうにもならないときがある

宇宙が透けるような空も
青葉踊らせる風も
水面に跳ねるひかりも
気持ち馴染まない日がある

混んだ電車つり革で
遠く別の町に立ち
川沿いの道歩き
水湛えた田を眺め

あまたの花と葉の色づかい
ちいさき生き物の息づかい

目的の駅のアナウンス
改札を抜けた街は人いきれ
目まぐるしく歩く人の流れに
つかの間足を止める

つり革の町は色褪せ
この街のトーンに溶けて消える

 

tamito

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