はじまりの春が来るのを待っている

【詩】

 

あの夏からもう何年も経った気がして振り返る

ぼくの残像がどこまでも過去へと続いている

坂本さんと駅のホームで交わした会話を

いつまでもぼくは鮮明に覚えている

巨大な天体望遠鏡でふたり赤い星を眺め

フォボスとダイモスが空に浮かんでいたこと

公園の池のほとりで突然泣きだしたきみ

差し出した傘が風に飛ばされずぶ濡れで走る坂道

すべてが遠い昔のように思えてぼくはまた

はじまりの春が来るのを待っている

はじまりの春が来るのを待っている

 

tamito

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#詩

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