【詩】
ぼくが痛みを知らずにいた頃
いろんな人が傷を負っていて
その人たちにどれだけぼくは
寄り添うことができただろう
明日は今日よりいい日になる
そんな約束がこの国から消え
ぼくらは身近な行き場さえも
見失い今ばかりさ迷っている
仕事に痛み生活に痛み友人に
親子に矜持にさえ痛んでいる
そんな痛みを知りどうやって
日々を過ごせばいいのだろう
ほんとはその手が震えている
気づかれぬよう両手をそえて
ほんとは鼓動に破れそうな心
抑えるように浅く洩らす呼吸
誰にも見せられない心象画は
太陽も月もでない低い曇り空
出口の見えない長いトンネル
ひとり歩き続ける背中の寒さ
街の雑踏隣を歩く人の痛みを
tamito
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