ガラガラとガラガラと

【詩】

 

過去のあらゆる風景の断片が

割れた地面のすき間に落ちて

身体から何かあふれ出そうな

そんな夢から覚めた午前二時

ガラガラと吸い込まれてゆく

ガラガラとガラガラと無音で

怒りにも似た悔恨が喉元まで

虚無に似た希求がせりあがり

えづいても涙しか出てこない

落ちゆく記憶言いしれぬ感情

 

十七歳の君と二十五歳の君が

同時に現れてどちらか選べと

二人とも僕は好きだったから

どちらか選ぶなんてできない

そんなバカげた夢から覚めて

「ここはどこだ」と午前四時

遠い昔にやめた煙草が無性に

どうしようもなく吸いたくて

コンビニまで歩いて夜明け前

東の空に沈みそうな月を見る

 

うとうととまどろむ午前六時

意識と無意識の狭間に浮かぶ

不明瞭で明確なシークエンス

ガラガラと落ちなければいい

それだけを願って拳をにぎる

もうすぐこのベッドから出て

カーテンを開けなきゃなんて

靄がかかった頭で考えている

おまえはいつ大人になるんだ

死んだ父が情けない顔で言う

 

tamito

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#詩

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