ためらい

【詩】


一歩いや半歩踏み込めずにためらう

ためらう気持ちがわずかに宙を舞い

少しずつ形を成して同じ幻想を見る

ひとはみな語りすぎて語らなすぎて

いちばん大切なことは血の管に沁み

メビウスの帯のように出口を見失う

千の言葉にどれだけの色を重ねても

完璧な絵を描くことのできない僕は

絵描きにも物書きにもなれなかった

ほんの少しの距離にためらうだけの

ためらうばかりの流浪する傍観者だ

ひととき見る同じ幻想を胸の奥底に


tamito

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#詩

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