冬のデートは……

【シークエンス】

 

ヘイヘーイ!

? なに? どうかした?

ハイハーイ!

テンション高いね、何かいいことあった?

冬がやってきたんだよ、冬が!

うん、もう十日ばかり前からやってきてるよね

だから、ヘイヘーイ!

冬、好きだっけ?

うん、知らなかった? ちなみに春も夏も秋も好きだよ

きみはしあわせな人だよね

じゃあ、きみはしあわせじゃない人なの?

うーん、基本的にはしあわせだよ

じゃあ、しあわせなんじゃない! ではご一緒に! ヘイヘーイ!

へ、ヘイ、ヘ~イ

ハイハーイ!

ハイ、ハーイ!

ふぅ、きみは相変わらずテンション低いね

きみのテンションが高いだけで、ぼくは普通だよ

ぼくは普通だよ……いったいなにをもって普通を定義しているの、きみは

え、普通は普通だよ、一般的な日本人の日本固有の風土に培われて育ち儒教思想に行動規範をおいた言動だよ

わからない、わからないよ、そして、絶望的につまらない

絶望的につまらないって……

だったらまず、日本人であることを捨てようよ、そして四書を捨て町に出よう!

いや、四書は読んだこともないし、町にも出てるよ、寺山修司は好きだし

ふーん、じゃあ今日一日、そのテンションでわたしと過ごすつもりなんだ、それでいいのか青年!

いや、ぼくも久しぶりのデートを楽しみたいと思っているよ、行動予定表もつくってきたしね

なに? 行動予定表とな、青年、それを拙者に見せなされ

誰?

わしか? わしのことは気にせんでよい、ほれ、その行動なんちゃらを見せなされ

わかったよ、はい

なになに、ふむふむ、ビリビリ

あー、破ったよ、なにすんのさ、じいさん!

こんなものがあるからおぬしはダメなんじゃ

じゃあ、計画しないでどうするっていうのさ

感じるのじゃ、考えるのではなく

ブルース・リー、きみほんと好きだよね

なにをわからんことを言うておる、それよりも目を閉じて感じるのじゃ

ふん、わかったよ、こう?

そうじゃ、心を澄まして風の歌を聴くのじゃ

今日はいろんなパクりをほうり込むね

黙って感じるのじゃ、フォースの導きを

フォース……ヨーダ、何か見えてきたよ!

ルーーク、それでいいのだ、ルーーク

こんどはオビワンだね

高い塔が見えるであろう、ルーーク

うん、見えるよ、高い塔が見える

そこに行くのだ、ルーーク

でも、どっちに行けばいいんだろう

東だ、ルーーク、地下鉄に乗って押上に向かうのだ、ルーーク

えーと、押上ね、……ってそれ、スカイツリーじゃないか、ぼくがさっき行動予定表に書いた!

あれっ、そうだっけ?

そうだよ! 展望台でスターウォーズ展やってるからそれをメインイベントにしたデートコースだよ!

まあまあ、そんなに怒りなさんなって、若いの! 血気盛んだねぇ

こんどは誰なの?

あ~あ、遊んでたらお腹すいてきちゃった

あ、そういえば、ここのカフェのパンおいしくて有名だよ、軽く食べてから行こうか

食べたーい、食べたーい、食べたーい!

あれ? ない!ぜんぶ売り切れみたいだ。買えなかった子供が泣いているよ

ふーん、なぜ泣いているのかしら、パンがなければケーキを食べればよろしいのに

……それ、灰谷くんが三回に一回くらいの割合で作品に投げ込んでるネタだよね

じゃあ、もういいよ、スカイツリーに突撃しよう! ヘイヘーイ!

……

さあご一緒に! ヘイヘーイ!

ヘイ、ヘ~イ

もーう、まだテンション低いの? だったらひとりで行くからね

あ、待ってよ、ぼくも行くよー! ヘイヘーイ!

 

tamito

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#小説 #いつものふたり

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