昼と夜の境界

【詩】


草笛吹く初老の男がいて

上水沿いに拓けた畑みち

あかね色染まる雲蝉の声


無人販売の台に乗る西瓜

縞模様まだらな小さな夏

ポケットのコインを探る


右手で幼子の手をにぎり

左手で丸い命をさする女

手首にさがる袋に氷菓子


バイバイまた明日さけぶ

二つの影が左右に分かれ

最後の光が山の端に沈む


まだかすかに明るい空を

見あげつつ歩く帰りみち

昼と夜の境界を見極めて


おぼろな月あかり鳴く蛙

千年前の今日との違いを

証明せよと夜がささやく


tamito

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#詩

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