下書き

【詩】

 

下書きに残された形にならない気持ちが

降り続く雪のなかに埋もれてゆく

目に見える言葉はほんのわずかに過ぎず

例えばこの巨大な駅のデッキから眺む

高層ビルや時計塔の夜景を余さず

記すことなどできようはずもなく

例えば昨夜の待ち惚ける誰かの心の動き

さまよう街のネオンライト濡れた舗道の

リアリティを写し取れるはずもなく

その実のほんのひとかけらが形を成さずに

降る雪のよう積もってゆくだけなのだ

世界にありあまる下書きから春、

いっせいに花が咲き誇ればどんなにか

この鬱々とした灰色の心が晴れることか

この世に埋もれるすべての下書きに愛を!

 

tamito

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#詩

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