遠くに蝉の声惜しまれて

【詩】


遠くに蝉の声惜しまれて

日暮れて夕闇の稲穂ゆらす風

川へ降りるには暗すぎるから

手をとり畦ゆく二人にはただ

帰る道なくして漂う影

少し欠けた月が眩しいほどに

つないだ手と手に力がこもる

どこにもたどり着けない魂がいま

ゆく夏を静かに見送っている


tamito

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