傘をさそうが傘を閉じようが
【詩】
地上から10メートル浮きあがり
人を見おろしている彼女と
街角に立って絵描きのように
人を眺めている彼がいて
どちらも同じものを見つめている
どちらも同じ痛みを感じている
彼もまた昔は空に浮き
広くそして狭い世界を見おろしていた
彼女もまた時を経て地上から
狭くそして広い世界を眺めるだろう
雨はいつだって空から降って地上を濡らす
人は傘をさしたり閉じたりして生きている
ピアノの旋律が治める日もあれば
ベースの律動が早める日もある
無意識に呼吸をするものには
呼吸を自覚するものの気持ちはわからない
そうでなければこの世は悲しみに
深い悲しみに飲み込まれてしまう
傷つけあうことさえなければそれでいい
空に浮こうが地を這おうが
傘をさそうが傘を閉じようが
tamito
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