五月雨の初めの日

【詩】

 

濡れた鋪道
工事中の片側通行
傘をすぼめすれ違う
こぼれ落ちる雫の縁(えにし)
五月雨の初めの日

カフェの窓
冷たい飲み物さけて
肌寒さ暖めあうはずが
会えば言葉が空回りして
近くて遠い右隣り

緑濃く
雨の匂いに混ざって
ひととき同じ傘のなか
ほんとの言葉探して眺む
紫陽花の向こう側

また雨の日々
街から色を消して
雲のしたひっそりと
水たまり飛び越え歌う
音階のない旋律

田にあって
時に林に森にあって
傘をたたみ在るがまま
濡れた景色溶け込もうと
不自由な殻を背負い

 

tamito

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