海月

【詩】

 

ターミナル駅地下街の雑踏に紛れ

人波に歩をあわせ安堵している

何かから逃れようとする自分がいる

急ぎ足で追い越す黒いスーツの男

道幅に広がる観劇帰りの老婦人

じゃれあいながら進む中学生

壁際で熱心にメール打つ女子高生

どこにも属さない僕は何ものでもなく

ひんやりとした地下街をぐるぐるとさまようだけの

まるで海月のような存在だ

たまたま海面から顔を出せば

今日も初夏の青空がビルの向こうに眩しく

 

tamito

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#詩

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