爪を剥がされた虎
【詩】
その虎は前足の爪を剥がされて野に放たれ
小さな鼠さえも捕まえられずに痩せほそり
一週間の後に衰弱し沼地で横たわり死んだ
虎はよく人を襲い19人もの犠牲者をだした
人は虎を殺そうとしたがある者が提案した
爪をすべて剥げばもう何も捕らえられない
殺すべきか爪を剥がして放つべきか人の心
敢えて苦しめるという残酷な闇が生まれた
23人の少女を誘拐し地中に埋めた男がいた
男が捕まったとき判事は死刑を判決とした
刑が執行されるまで2年半の歳月を要した
人々の心は30ヵ月もの間苦しめられそして
同じ30ヵ月の間に死刑囚は神の教えを受け
心穏やかな日々を送り絞首台に自ら立った
刑の執行後も人々の悲しみや怒りは消えず
胸の奥暗く小さな部屋をつくり鍵をかけた
どこまでも高く晴れわたる秋の空を仰いで
胸のなか透き通るような心持ちどれだけの
瞳に映るだろうか陰り湛えた瞳にもいつか
同じ空の色風の音が胸のなか窓を開け放ち
積もった埃を払いあの小さな部屋鍵を開け
そこにうずくまる闇を昇華できるだろうか
強さや弱さや怒りや悲しみそんなすべてを
すべてを背負いこの空の色に風の音に似た
tamito
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