ありふれた話

【詩】


新たな時代に抗い

<いま>を生きる人たちがいて

僕は気持ちの8割で彼らに同調し

残り2割で冷静に観察していた

彼らの言動は人の気持ちに寄り添い

実に見事に同世代の心を掴んだ

しかし思想と現実社会との間には

埋めようのない深い溝があり

ある者は新たな時代を受け入れ

<いま>を生きることを捨て

ある者は両者に引き裂かれるように

底なしの深い溝に落ちていった

踏みとどまろうとする者に僕は

何度も「がんばれ」と拳を握り

<いま>に心を残しながらもやむなく

時代を受け入れた者の悲しみを食んだ

僕はいつでもどこか傍観者であり

傷口の痛みや心をなくすつらさを

ほんとうに理解することはなかった

これは1864年の話であり1939年の話である

そして1969年の話であり2012年の話である

いつの時代にもどこにでもあるただの

ただのありふれた話だ


tamito

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